気候変動への対応
TCFD提言に基づく情報開示
基本的な考え方
UACJグループは、「地球環境が全ての生命にとってかけがえのないものである」という考えのもと、気候変動対策に積極的に取り組むことが社会の一員としての重要な責務であると認識し、「気候変動への対応」を当社グループの経営のマテリアリティの一つに定めています。とりわけ、CO2に代表される温室効果ガス排出削減によるカーボンニュートラル実現に向けて大きな効果が期待できる水平リサイクルの推進と、省エネルギーに役立つアルミニウム製品の開発は、リスクと機会の両面において経営上の重要課題と位置づけています。
2021年9月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」に加入しました。今後、気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を、当社の事業に即した独自のシナリオに基づく評価・分析を通じて、気候変動への対応をより一層深化させていきます。


ガバナンス
UACJは、気候変動対策への取り組み体制として、2021年4月1日付で社長を委員長とする「気候変動対策推進委員会」を設置しました。当委員会のもとに、「カーボンニュートラル対応」「リサイクル推進」「アルミ化推進」「原料調達」の各ワーキング・グループ(以下、WG)を設置しています。WGの検討結果や活動成果は、気候変動対策推進委員会を通じて経営会議へ、必要に応じて取締役会へ報告し、決議を得ることとしており、経営層が直接ガバナンスを行っています。
戦略
UACJでは、1.5℃目標などの気候シナリオを考慮した中長期的な気候関連のリスクと機会、事業・戦略・財務に及ぼす影響の分析とともに、目標達成に向けたロードマップ作成を進めています。
ロードマップ作成への第一歩として、環境省による「令和3年度TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参画して、TCFDシナリオ分析に取り組みました。
UACJ売上高の約5割を占める「アルミ圧延品事業」の中の「板事業」の国内とタイの製造拠点を対象としています。
UACJ事業ポートフォリオ(売上高)
対象セクター(製品例)
セクター1 | セクター2 | 製品例 |
---|---|---|
アルミ圧延品事業 | 板事業 | 飲料製品(ボディ材、クロージャ―材) 自動車(パネル材、熱交換器材) |
押出事業 | 自動車(フレーム、熱交換器材・配管材)、IT製品 | |
箔事業 | 医薬品、食品包装、電池 | |
鋳鍛事業 | 自動車(コンプレッサホイール、カーエアコン部品) | |
加工品・関連事業 | 自動車部品事業 | 自動車(バンパー、サンルーフガイド) |
加工品事業 | 建材、産業機器 |
検討リスク項目
移行リスク
- 政策:炭素価格、その他規制(リサイクル規制、水規制 等)
- 市場:エネルギー価格の変化、原材料の高騰
- 評判:顧客行動の変化、投資家の評判変化
物理的リスク
- 慢性:平均気温の上昇
- 急性:異常気象の激甚化
リスク重要度評価(リスクと機会)を行った上で、1.5℃と4℃の2つのシナリオについて分析しています。
「選択シナリオ」と「将来社会像イメージ」および「組織課題への対応策(1.2MB)
今後はシナリオ分析の全社展開や成熟度の向上に努め、当社ウェブサイトや統合報告書などの媒体を通じて開示・報告し、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションに努めていきます。
今後のアクションとアクションの詳細
シナリオ分析の全社展開
- 今回のシナリオ分析では対象を板事業と国内およびタイ拠点に絞った。今回の手法を展開し、グループ全体でのシナリオ分析を実施する
- 本プロジェクトチームをコアとしてタスクフォースやワーキンググループ等を設置して、グループ全体、各業務層に展開する。
モニタリング・実行体制
- 今回は2パターンのシナリオを設定した。気候変動の不確実性は高く、どういった将来が予想されるかを定期的にウォッチし、影響評価を行い、戦略を見直す。
- 気候変動リスクへの取り組みは今回はPJとしてチーム組成したが、一時的な取組としないためにも、正式な組織ロールとして組み込む。
成熟度の向上
- 今回実施した取り組みはあくまでシナリオ分析の「レベル1」のため、今後レベル2、3に向け、成熟度を段階的に高める。
リスク管理
気候変動対策推進委員会事務局内に設置した「TCFD対応チーム」が、TCFDの枠組みに沿ったリスクと機会の特定、シナリオ・ロードマップ作成を担っています。気候変動への対応はグループ全体で取り組む方針であることから、TCFD対応チームには、営業、製造、法務、リスク管理、広報、サステナビリティ推進及び財務本部など、組織横断的に幅広いグループ内のメンバーが参加し、取り組みを推進しています。
想定されるUACJグループへの事業インパクト(リスクと機会)
移行リスク・機会
リスク項目 | 事業インパクト | 評価 | ||
---|---|---|---|---|
小分類 | 指標 | リスク | 機会 | |
炭素価格(炭素税・国境炭素調整) | 収益支出 |
|
|
大 |
各国の炭素排出目標/政策(排出量取引、カーボン・フットプリントの報告義務化等) | 収益支出 |
|
|
中 |
各国のリサイクル規制/政策 | 収益支出 |
|
|
大 |
エネルギーミックスの変化 | 収益支出 |
|
|
大 |
次世代技術の進展 | 支出 |
|
|
大 |
顧客の行動変化 | 収益支出 |
|
|
中 |
物理的リスク・機会
リスク項目 | 事業インパクト | 評価 | ||
---|---|---|---|---|
小分類 | 指標 | リスク | 機会 | |
平均気温の上昇 | 収益 |
|
|
中 |
異常気象の激甚化(サイクロン、洪水) | 収益支出 |
|
|
大 |
指標と目標
UACJは、「気候変動への対応」をマテリアリティの一つに掲げ、Vision2030(2021年5月公表)にKPIとして「2030年度におけるサプライチェーン全体でのCO2排出量を2019年度比22% 削減(BAU※1比)」を設定しました。
2020年度からは、温室効果ガスの排出量を、スコープ1、2、3※2ごとの算定・公表を開始し、2030年度の目標達成に向けて排出抑制に向けた取り組みを推進していきます。
- ※1 BAU:Business as usualの略称。BAU比とは、何も対策を講じずに現状維持した場合を指し、本目標では、2019年度を基準として生産量及び品種構成に変化がないと仮定した場合のCO2排出量を意味する
- ※2 スコープ1:社内での燃料の燃焼による直接排出
スコープ2:社内で使用する電力を発電する際の間接排出
スコープ3:サプライチェーン全体での上流および下流における排出
CDPへの自発的参加
国際的の気候変動対策イニシアチブであるCDP「カーボン ディスクロージャ プロジェクト」への自発的参加により、温室効果ガスのマネジメント水準の客観的評価を得ながら、活動のレベルアップを図ります。一例として、GHGプロトコルの定義に従い、温室効果ガスをスコープ1(社内での燃料の燃焼による直接排出)、スコープ2(社内で使用する電力を発電する際の間接排出)、スコープ3(サプライチェーン全体での上流および下流における排出)に分けて、算定し、本ウェブサイト内で公表しています。