../shared/include/header.html

日本のアルミニウム圧延の歴史

Story 04

2003 年 〜 2012

新たな道を探して

「日本がかつての勢いを
取り戻せない中でも、
アルミニウムの技術発展と
ともに可能性は
さらに拡がっていく」

アルミニウムの用途は、宇宙にまで飛び出した。国産のH-Ⅰロケットの燃料タンク材として活躍し
後継のH-Ⅱ・H-ⅡAロケットでも継続的に採用されている。写真は、H-IIAロケット

大手2社が合併し、古河スカイ(株)が誕生

バブル崩壊後の長期にわたる景気低迷は、アルミニウム業界にとっても先を見通しにくい、厳しい時代でした。そんな中、1997年に大手圧延メーカーの古河電気工業(株)とスカイアルミニウム(株)が業務提携を結び、調達・輸送の一本化によるコストダウンや業務効率化を推進します。2003年には2社の各部門を統合し、古河スカイ(株)が誕生しました。そして2005年、東証一部への上場を果たしました。
統合後は、生産移管と設備強化を進め、大ロット(缶材・箔地・LNG材等)は福井工場、中小ロット(自動車材・PS版・一般用厚板等)は深谷工場への集約が決定し、日光工場は小ロット製品に特化しました。2012年には日光工場の上工程(鋳造・熱延・冷延)を停止し、仕上げラインのみとしました。冷間圧延機はその後、タイに設立されたUATHに移設され、現在も稼働しています。2012年には鍛造事業の改革も行われ、鍛造は小山工場に一本化され、15,000トンの超大型鍛造プレスの導入も決定しました。このプレスは、鉄鋼業界も含めて当時の日本で最大の加圧能力であり、液晶パネルの製造装置用基板ホルダー、航空機材、宇宙ロケット航空部材などを受注しました。

この時期、住友軽金属工業(株)も改革を進め、押出事業では2010年に千葉製作所を閉鎖し、(株)住軽テクノを統括会社として、その傘下に製造拠点を置くグループ会社体制としました。また、2002年にはSumikei Czech s.r.o.を設立し、欧州での初の事業展開をしました。加工品事業では、(株)日本アルミを中心とした体制を敷きました。

15,000トンの超大型鍛造プレス

新たな用途に対応するため、高度化するアルミニウム製品

「日本がかつての勢いを取り戻せない中でも、アルミニウムの技術発展とともに可能性はさらに拡がっていくに違いない」――。各社はこんな思いを抱きながら、成長のための挑戦を続けました。2000年代に入ると、それまでの地道な取り組みが実を結び始め、アルミニウムの新たな用途開発が進展しました。
その代表例は、繰り返し充電が可能なリチウムイオン二次電池です。正極の集電体およびケースに、アルミニウムは欠かせない素材となりました。飲料缶の分野では、2000年にボトル缶が登場。コーヒー飲料を中心に急速に普及しました。
自動車材の分野では、2000年代にさらに厳しくなった燃費規制・排ガス規制に対応する手段として、アルミニウムへの置き換えがさらに進みました。ボディ材では、住友軽金属工業(株)や古河スカイ(株)*1が開発した、成形後の塗装焼き付け時に時効硬化*2する特性を持った合金が注目を集めました。そして高級車、スポーツ車を中心に、採用が広がっていきました。また、同じころに登場したハイブリッド車に不可欠な電子機器の冷却や、排ガスの冷却用途に、アルミニウム製の熱交換機が採用されました。加えて、ターボチャージャーに使用される鋳物のコンプレッサホイールにも、アルミニウムが用いられました。古河スカイ(株)は、ベトナムに鋳物専用工場を開設し、2008年には世界シェアの5割を占めるトップメーカーになりました。

IT分野では、携帯電話・スマートフォンの外装にアルミニウムが採用されるようになりました。デザイン性・高級感などの意匠性が求められ、各社は高精度な加工・表面処理などの技術を結集。古河スカイ(株)の製品は世界的な携帯電話メーカーに、住友軽金属工業の製品は大手IT機器メーカーに選定されています。建材用途では、蜂の巣のような形状の接着アルミハニカムパネルが、さまざまな建築物に採用されました。このほか、純国産のH-IIAロケット、および鉄道車両・船舶向けにアルミニウムの鍛造品を、アルミニウム製のヒートシンクを家電や輸送機器などの分野へ納入しています。

*1 : 開発当時の社名は、スカイアルミニウム(株)。
*2 : 合金を焼入れしたのち、適度な温度環境で一定時間放置しておくと、硬くなる現象。

世界トップシェアを誇るコンプレッサホイール

舞台は海外へ——。世界レベルの競争力を獲得するために

アルミニウム産業がさらに成長するためには、事業の舞台を海外へシフトしなければならないことは明白でした。2010年ごろ、業界各社が注目していた地域のひとつが、自動車の一大生産拠点となっていたタイでした。古河スカイ(株)と住友軽金属工業(株)は、タイに相次いで現地法人を設立。さらに古河スカイ(株)は2012年、アジア地域の将来性を見込んで、同国のラヨンに東南アジア最大級の圧延工場の建設に着工しました。

2010年、両社は海外市場での競争力を獲得するために、住友商事(株)などと組み、北米企業からアルミニウム板圧延品製造販売会社「アーコ」(現Tri-Arrows Aluminum Inc.)を買収。まずは缶材で、北米・中南米市場での存在感を高めていく戦略を実行に移しました。こうして両者は日本を拠点とした、世界を舞台とするアルミニウム圧延メーカーとしての未来を描くようになり、2013年の統合へとつながっていきました。

タイのラヨンに建設されたFurukawa-Sky Aluminum (Thailand)Co., Ltd.

アルミ Column ❹

アルミニウムの新たな用途開発が進展した2000年代の代表的な事例は、繰り返し充電が可能なリチウムイオン二次電池です。まず、ビデオカメラ向けリチウムイオン二次電池の正極材に、日本製箔(株)(現:(株)UACJ製箔)のアルミ箔が採用され、これが事実上の業界基準となりました。以後、携帯電話やノートパソコン、電気自動車などの普及と共に、需要が拡大しました。
一方、二次電池のケースには、マンガンと微量のマグネシウムおよび銅を添加した「MX312」というアルミニウム合金が採用されました。さらに封孔板材にも、防爆弁加工に優れる「FS11」という合金が使用されています。

*過電圧や過電流による電池の爆発を防止する機構。

次のストーリー「アルミニウム総合メーカー
UACJの誕生」を読む