トップメッセージ

さらなる高みを目指して
一歩一歩着実に
登り続けていきます。

代表取締役社長 石原 美幸

環境変化を見極めて進むべきルートを示す

UACJは、統合5周年となる2018年、新しい3カ年の中期経営計画をスタートさせ、グローバルアルミニウムメーカーとしての成長戦略を一段と加速させています。この節目の年に代表取締役社長を拝命し、その責任の重大さに身の引き締まる思いがいたします。同時に、グローバル競争を勝ち抜き、中長期的成長を実現するという高い“頂”を前に、「よし、登るぞ」と大きな意欲が湧いてくるのを感じています。

私の趣味の一つが登山です。企業経営も登山も、目標達成のために計画を立て、念入りに準備をして実行しなければならない点など、共通する部分が多いと考えています。さらに、いくら綿密な計画を練っても、必ずしも計画通りに進まない場合がある点も共通しています。

登山を始めたのは、入社後、当時の上司に誘われて北アルプスを登ったのがきっかけですが、登山中に低気圧が発生し、山の尾根で強烈な風雨に晒される非常事態に直面しました。幸い、リーダーである上司が、避難小屋を経由する登山ルートを念のために選んでいたこと、そして即座に計画を変更して小屋で一夜を過ごす決断を下したことで難を逃れることができました。このように、想定を超える事態に直面した時にもきちんと対応策を用意しておくこと、そして非常時にも冷静に最善の決断を下すことが、リーダーの重要な役割であると実感しました。

山の天候と同じように、アルミニウム産業を取り巻く経営環境も激しく変化します。UACJは統合以来、新興国市場の成長や自動車用パネル需要の拡大などに対応し、アジアや北米を中心に積極的な先行投資を続けてきました。前中期経営計画では、想定以上の市場成長に対応するため、当初の計画を前倒しして、UACJ (Thailand) Co., Ltd.(以下、UATH)の第3期投資やTri-Arrows Aluminum Inc.(以下、TAA)における自動車材の生産能力の拡大投資などを実行しました。しかしながら、立ち上げ費用の増加やエネルギーコストの上昇などが影響し、計画最終年となる2017年度の収益目標は未達となりました。積極的な成長戦略や先行投資の計画自体に間違いはなかったと確信していますが、その実行面においては課題があったと反省しています。

2018年度からスタートした新しい中期経営計画は、将来ビジョンである“UACJのありたい姿”の実現に向けて、10年後、5年後のあるべき姿を描き、その最初の3年間にあたる2018~2020年度に必ず成し遂げなければならない施策を行動計画にまとめました。当然ながら今後5年、10年はもちろん、中期経営計画の対象となる3年間にも、計画時の想定を超える環境変化が生じる可能性があります。しかし、いかなる場合にも従業員が迷わず前に進めるように、リーダーとして冷静に状況を分析し、目指すべきルートを示していくつもりです。そして、UACJの従業員の知恵と力を結集し、中期経営計画の目標達成と将来ビジョンの実現に向けて、一歩一歩着実に登り続けていきます。

前中期経営計画の振り返り(業績)

目標指標 2016年度実績 2017年度実績 2017年度当初目標
収益性 売上高(億円) 5,683 6,243 7,000
経常利益(億円) 198 194 350
Adjusted EBITDA(億円) 568 507 670
ROE(%) 5.0 6.5 10.0
安全性 D/Eレシオ(倍) 1.49 1.50 1.33
投資 設備投資(億円) 1,133 (2015~2017年度累計) 900

技術は人の役に立ってはじめて価値がある

今回の新中期経営計画の作成にあたって定義したグループの将来ビジョン“UACJのありたい姿”は、「アルミニウムの持つ可能性を最大限に発揮し、社会と環境に貢献する」というものです。これは、とくに新しい考えではなく、当社グループがアルミニウムメーカーとして長年取り組んできた事業活動の本質的な価値を改めて確認したものであり、これからも決して変わることのない目標でもあります。

アルミニウムは、金属のなかでは比較的歴史の浅い素材でありながら、その多彩な特長によって、自動車や航空機などの輸送機器や、食品・医薬品の包装材、IT機器、建材など、社会のさまざまな領域で不可欠の素材となっています。さらに、飲料缶のリサイクルや軽量化による自動車の燃費向上に象徴されるように、環境負荷の低減につながる素材としても注目されています。

UACJが目指すのは、このアルミニウムを単に素材として提供するだけでなく、独自の研究開発力と生産技術を駆使しながら、社会と環境にとってより価値あるソリューションとして提供していくことです。

私は、入社後、工場における製造機械の設計・開発や、製造現場のマネジメントなどの業務に長年携わってきました。そうしたものづくりの現場での経験を通じて実感したのは「技術は人の役に立ってはじめて価値がある」という当たり前の事実です。いくら優れた技術があっても、作り手がお客様と目線を合わせ、そのニーズを正しく理解していなければ、お客様にとって価値ある製品を提供することはできません。それだけに、技術革新のスピードが加速するなかで、これからはお客様と新しい技術・製品を一緒に開発していく「共創」がますます重要になります。

UACJでは、今後、こうした「共創」をより一層積極的に推進し、さまざまな産業分野のお客様の価値向上に貢献するソリューション・プロバイダーを目指します。そしてお客様をはじめ社会や人々の生活になくてはならない存在になりたいと考えています。

UACJのありたい姿
UACJのありたい姿UACJのありたい姿

先行投資の着実な回収と資本効率の向上を

先ほど申し上げたように、2018年度からスタートした中期経営計画は、この“UACJのありたい姿”の実現に向けて、5年後の2022年度およびその通過点となる2020年度の数値目標を定めました。そして、そのために必ずやらなければならない2018〜2020年度の重点方針として、4つの施策を実行していきます。

1つめの重点方針が、「成長市場(アジア・北米)、成長分野(自動車)への注力」を継続していくことです。たとえば、成長市場のアジアでは、UATHの生産性向上を図り、2019年度の営業黒字を目指します。すでに月産1万トン超の生産水準に達し、タイ人のエンジニアによるオペレーションにて操業が可能になっていますが、今後は新設のラインや維持・メンテナンスも現地スタッフですべて対応できるように、技術・ノウハウの伝承を強化していきます。一方、北米では、TAAの生産効率をレベルアップさせ、缶材・自動車材の旺盛な需要を取り込んでいきます。自動車パネル材供給を担うConstellium-UACJ ABS LLCでは、Constellium社とのタスクフォースによって生産性(歩留り・稼働率)の改善に取り組んでおり、旺盛な需要の獲得と安定供給を追求していきます。

成長分野である自動車材事業については、部品産業の裾野が広く、世界的な需要拡大が見込まれることから、グループ横断で経営資源を集中投入していく計画です。板・押出・箔・鋳鍛・銅管・加工品の各事業において自動車材の供給能力を強化していくのはもちろん、事業間連携や研究開発部門との連携による新製品開発を積極的に推進します。そこで、現地の自動車メーカー、部品メーカーのニーズを詳しく把握し、お客様との「共創」を推進していくために、当社では初となる海外研究開発拠点を開設しました。

2つめの重点方針は、統合以降積極的に実行してきた先行投資の「着実な回収」であり、これが今回の中期経営計画の大きな柱でもあります。すでに決定済みの主な設備投資・投融資は概ね2019年度に完了し、新規の戦略投資・投融資については厳選して実行していく方針です。2019〜2020年度を起点に投資回収を本格化させ、2021〜2022年度からは大幅に利益が拡大する見込みです。

3つめの重点方針が、ROIC重視の経営による「資本効率の向上」です。ROICを営業利益率と投下資本回転率に分解し、営業利益率についてはセールスミックス改善やコストダウンで、投下資本回転率は棚卸資産回転率などを指標に管理していくことで、資本効率の向上を図ります。グループ全体でROIC経営を推進するとともに、各社・各事業でも評価を実施し、中長期の成長性、戦略性、事業特性を考慮しながら、事業の選択と集中、ポートフォリオ管理を徹底します。これらの取り組みにより、2020年度にフリー・キャッシュ・フローの黒字化、2022年度にROIC8%以上を目指します。

そして4つめの重点方針が、グループ共通の行動理念「UACJウェイ」の共有と浸透です。統合以降もグローバルな合弁事業や M&Aなどによって多くの新しいメンバーがグループに加わりました。そこで、”UACJのありたい姿”を実現するためにグループの従業員一人ひとりが大切にすべき行動理念として「UACJウェイ」を制定しました。各国・各拠点の文化や風土などを尊重しつつも、すべての事業活動の根底にあるUACJの基本的な行動理念や考え方を共有・浸透させることで、グループとしての求心力や一体感の醸成を図ります。

これらの重点方針の展開により、2020年度には経常利益300億円、ROIC 6.4%、ROE 8.0%、D/Eレシオ1.5倍を目指します。今回の中期経営計画は、2020年度以降、UACJが大きく飛躍するための大変重要なステップでもあります。今後、重点方針の進捗状況をモニタリングしながら、状況の変化にも臨機応変に対応し、目標達成を目指します。

中期経営計画 重点方針
2018~2020年度

  • 1. 成長市場(アジア・北米)、
    成長分野(自動車)に注力継続
  • 2. 先行投資の着実な回収
  • 3. 資本効率の向上(ROIC重視)
  • 4. 行動理念の共有と浸透”UACJウェイ”

永続性・持続性の高い組織、自律的な組織を目指す

この4つの重点方針と併せて、これから注力していかなければならないのが、UACJを永続的な組織にするための仕組みづくりです。当社は、誕生して5年めの若い会社であり、持続的な事業成長を支える体制づくりという面においては課題が少なくありません。

すでにいろいろな施策を進めており、その一つに「働き方の見直し」があります。具体的には、2018年から営業・管理・R&D・工場間接部門を対象とした働き方改革プロジェクトをスタートさせ、業務生産性の革新に取り組んでいます。今後は、工場直接部門でも新勤務体系の検討や人員拡充などの施策を通じてワーク・ライフ・バランスの実現を推進していきます。さらに第4次産業革命の進展を見据え、今後は、工場はもちろん事業のさまざまな領域において、IoTやAI、ロボティック・プロセス・オートメーションなどの最新テクノロジーを積極的に導入し「仕事の効率」を高めていくことが重要です。

ただし、このように業務の効率化・生産性を追求していく際にも、絶対に疎かにしてはならないのが「品質の追求」です。当社グループがグローバル市場で競争力を維持・向上させていくには、全社・全拠点が等しく「品質をつくり込む力」を持つ必要があります。そして、そのためには最新の設備やシステムを導入するだけでなく、従業員一人ひとりがそれぞれの現場において「信頼という仕事の品質」を高めることが不可欠です。

当社では、こうした人づくりと組織づくりをより一層進めるべく、従業員の能力開発に力を注いでいきます。中期経営計画の重点方針の一つに掲げた「UACJウェイ」の共有・浸透もそのための意識改革、啓発活動の一つです。また、製造現場における技能伝承は、最重要課題としてさらに強化していきます。当社では、団塊の世代の大量退職を見据え、2000年代前半から一部の工場で、技能伝承の場となる「塾」を開設してきました。その後、この「塾」は多くの工場で展開され、現在、さまざまな生産技術・製品技術に関する技能や知識、ノウハウの伝承が進められています。今後、拡大しつつある海外拠点への技能伝承や、AIをはじめとする新しいテクノロジーへの対応も視野に入れながら、より総合的な能力開発・人材育成プログラムへと発展させる構想も進めています。

こうした施策を通じて、当社グループをより永続性、持続性の高い組織、自律的に機能する組織に変えていくことが、私の重要な使命の一つであると考えています。そして、従業員一人ひとりの知恵と力を一つのベクトルにまとめ、組織、企業としての推進力、戦略実行力を高めることによって、中期経営計画の目標達成、将来ビジョンの実現が可能になると確信しています。さらなる高みを目指して新たな一歩を踏み出したUACJに、どうぞご期待ください。

5 つの取り組み

  • 1. 働き方改革を推進
  • 2. ものの品質をつくり込む力を持つ
  • 3. 仕事の効率を高める
  • 4. 「UACJウェイ」の共有と浸透
  • 5. 技能・技術伝承の向上や手段構築の場づくり

石原社長が語る中期経営計画

石原社長が語る中期経営計画