クルマを軽く、資源を循環させる UACJのアルミニウム技術が切り拓く、自動車パネル材の進化と未来
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1980年代から始まった自動車の「軽量化」の流れの中で、アルミニウムは「燃費向上」や「環境対応」の切り札として注目を集めてきた。「マツダ株式会社様のRX-7」のフードパネルや、本田技研工業株式会社様のNSXのオールアルミモノコックボディなど、先進的な採用例を経て、21世紀に入るとハイブリッド車やEVの普及とともに本格的に需要が拡大。
こうした時代の変化に応えるべく、UACJは2020年に福井製造所に自動車パネル用の専用設備を新設し、本格的に事業をさらに拡充した。2022年には自動車板材ブランド「U-ALight(ユーアライト)」を立ち上げ、低CO₂リサイクル材やクローズドループリサイクルといった先進的な取り組みを加速させている。今回のインタビューでは、自動車パネル材の歩みを知る研究者や技術者、そして営業の視点から、その挑戦と未来をうかがう。
SPEAKER

マーケティング技術本部
R&Dセンター 基盤研究部
(元技術開発研究所*2 副所長)
戸次 洋一郎

マーケティング技術本部
モビリティテクノロジーセンター
副センター長 博士(工学)
新倉 昭男

マーケティング技術本部
R&Dセンター 板・鋳鍛製品開発部長
浅野 峰生

板事業本部
自動車材営業部(技術営業)
主査
八野 元信
- 部署名・肩書きは、2026年2月現在および過去における最高位のものを記載しています。
- 現R&Dセンター
UACJが支えた自動車の軽量化の歴史とアルミニウム材料の進化
——自動車パネル材にアルミニウムが採用された背景についてお聞かせください。
戸次自動車へのアルミニウム採用が本格的に進んだ最初のきっかけは、スポーツカーでした。当時は現在のようなCO₂削減や環境問題が主目的ではなく、走行性能を高めるための軽量化が求められていた時代です。
特にフロントエンジンの自動車では「車両の前側を軽量化してハンドリング性能を良好にする」といったニーズが強く、鋼板製のフード(ボンネット)パネルをアルミ製に置き換える動きが始まりました。当時は運動性能・応答性の向上が何よりも重要視されていました。
——アルミニウムを採用するというのは、当時としては革新的だったのでしょうか。
戸次軽量化素材そのものは以前から検討されていましたが、アルミニウムが自動車パネル材として本格的に使われ始めたのは1985年ごろからです。実際に量産ラインに乗せるという意味では、当時の取り組みは大きな一歩だったと思います。
——技術的には難しい面もあったかと思いますが、どのような工夫があったのでしょうか。
戸次当時は、鋼板は非常に成形しやすい素材として自動車メーカーの“標準”になっていました。そこにアルミニウムを使用するとなると、まずは鋼板と同じように加工できることが絶対条件でした。
そのため、最初はアルミニウムの種類の中でも加工しやすい5000系アルミニウム合金(以下、5000系合金と省略)をベースに、割れにくく均一に伸びる材料で合金設計や製造条件を何度も調整しました。試行錯誤を重ねることで、鋼板に近く扱いやすいアルミ板材を実現しました。
提供:マツダ自動車様
- 写真は、マツダ株式会社様の利用合意を受けていますので他への転載、転用を一切禁じます。
——当時はまず“鉄に近い成形性”を目指して5000系アルミニウム合金の改良が進んだとのことですが、そこから先の材料開発はどのように進化していったのでしょうか。
戸次5000系合金は加工しやすい一方で、塗装工程(焼付塗装)で強度が下がりやすいという課題がありました。そこで、焼付けによって逆に強度が上がる6000系アルミニウム合金(以下、6000系合金と省略)の開発を行いました。これにより、パネル材をより薄くしても必要な強度を確保でき、軽量化の幅が広がりました。自動車メーカーにもアルミニウムの良さが浸透し、「車体をできる限り軽量化できる材料を」という流れに合致し、6000系アルミニウム合金の利用が主流になっていきました。
——UACJグループはその中で、どのような役割を果たしてきたのでしょうか。
新倉1990年代の象徴的な出来事として、本田技研工業株式会社様が開発された初代NSXのオールアルミボディがあります。世界で初めて量産車としてボディ全体をアルミ化した車で、その材料の多くを当時のUACJの前身である古河電気工業様、旧スカイアルミニウム(後の旧古河スカイ)及び旧住友軽金属工業が担いました。アルミニウム合金の実車搭載に向けた開発が本格的に進んだ時期に当社が大きく関わったことは、その後の自動車材開発にもつながる重要な経験になっています。
「NSX(初代)」 国内初のオールアルミボディ*
提供:本田技研工業株式会社様
- 写真は、本田技研工業株式会社様の利用合意を受けていますので他への転載、転用を一切禁じます。
戸次日本では、鋼板とアルミニウム板を同じ塗装ラインで処理する必要があり、限られた時間でもしっかり強度が上がる6000系合金の開発が欠かせませんでした。成形性の改善や、焼付塗装時に強度が向上する仕組みの解明など、多くの課題を抱え、それらを解決してきたことにより、この分野の国内の研究開発が一気に進みました。
特に、焼付け時に強度を上げるには、アルミニウムの内部構造、それも、ごく小さな原子の集合体を制御することが重要ということがわかり、量産ラインの中でこの構造を制御する技術が確立されたことは大きな成果でした。これらの取り組みを通じて、日本で培われた6000系合金の高性能化技術は、現在の自動車開発において、世界中で活用されています。
——2000年代の環境規制強化により、自動車の軽量化ニーズはどのように変化したのでしょうか。
戸次2000年代に入ると、排ガス規制や燃費規制が世界的に強まり、「車を軽量化することでCO₂の排出を削減する」ことが大きなテーマになりました。従来はスポーツカーを中心に採用が進んでいたアルミニウムですが、一般車種にも軽量化が求められるようになり、アルミニウム材料の検討が再び活発化していったと感じています。
一方で、アルミニウムは、新地金を製造する際に多くのCO₂を排出するため、「本当に環境に良いのか?」という議論もありました。そこで重要になったのが、素材の製造から使用、廃車までの環境負荷を評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)という考え方です。LCAの視点が普及するに連れて、アルミニウムの環境価値を高めるためには「リサイクル材を増やすこと」が欠かせないという考え方が広がっていきました。
浅野1997年の京都議定書を契機に、ハイブリッド車を中心とした燃費性能向上への要求が一気に高まり、自動車のパネル材においても軽量化を目的としたアルミニウムの採用が再び拡大しました。
その普及に向け、「コスト」という大きな壁がありました。そのため製造工程や製造条件の見直しを行い、最適化することで、価格を抑えながら性能を確保する取り組みが求められるようになりました。
新倉米国では、自動車メーカーの平均燃費基準の達成を義務付けるCAFE(カフェ)規制が強化され、車体の軽量化が求められました。その象徴的な事例として、2015年に北米で発売された Ford Motor Company様の F-150 のアルミ化があります。約230kgという大幅な軽量化に成功し、「アルミニウムを積極的に使うべきだ」という機運が北米を中心に一気に高まりました。この流れは日本にも波及し、高級車やSUVなどを中心にアルミ化の動きが再加速しました。
当社でも、トヨタ自動車様のランドクルーザー向けにパネル材を共同開発する*1など、軽量化ニーズに対応した取り組みを進めてきました。
提供:トヨタ自動車株式会社 様
- 写真は、トヨタ自動車株式会社様の利用合意を受けていますので他への転載、転用を一切禁じます。
*1 2021.08.05 当社プレスリリース 「当社アルミ板材がトヨタ自動車 新型「ランドクルーザー」のボデーパネルに採用」に掲載
6000系アルミニウム合金の量産へ──福井製造所が果たした役割
——アルミパネル材の需要が高まる中、量産体制はどのように構築されていったのでしょうか。
浅野6000系合金のパネル材の供給が数千トン以上求められ始めたころ、まず必要になったのが専用の熱処理ラインでした。
6000系自動車パネル材は、「焼付塗装後に強度が上がる」という特性を得るために、連続的に急速加熱して急速急冷できる「CALP(Continuous Annealing Line with Pre-treatment)」という専用プロセスが欠かせません。しかし、CALPを導入するには、多額の設備投資が必要になるうえに広大な設置スペースが求められました。名古屋製造所で設計段階まで検討を進めましたが、構想が具体化するに連れて、「名古屋製造所の敷地には収まりきらない」という現実が明らかになりました。そこで候補に挙がったのが福井製造所です。当時の福井製造所は飲料用の缶材の製造が中心になっていたため、自動車材の量産経験はほとんどありませんでした。一方で、設備を新設できるスペースは十分にあり、「ここでなら専用ラインが建設できる」という判断に至りました。
——とはいえ、設備を置いただけでは量産はできませんよね。
浅野ご質問の通り、設備を設置しただけでは量産はできません。当時、設備がほぼ完成していましたが、「自動車材の工程設計ができる人」がいない状態でした。そこで、名古屋製造所、深谷製造所で自動車材の工程設計を行っていたスタッフが福井製造所に移り、工程設計や品質保証の立ち上げを担うことになりました。私自身も2020年の春に福井製造所へ移り、さまざまな部署と連携して、一緒に量産条件をつくり上げていきました。
新倉当時、深谷製造所はアルミニウム厚板を中心とする生産体制に移行を進めている段階でしたので、一般的な薄板や自動車パネル材の経験者は名古屋製造所と福井製造所へ移りました。そうやって、これまで蓄積してきた自動車材の製造技術を福井製造所に集約し、一から自動車パネル材の量産体制を構築しました。
浅野「自動車材の量産体制は、福井製造所の量産基盤に名古屋製造所と深谷製造所の知見をはめ込んで作り上げた」というイメージですね。まさに社内の知見を結集し、現場で築き上げた量産体制でした。
——新しいラインが立ち上がったことで、どのような変化がありましたか。
浅野2020年12月に量産を開始したのですが、私が福井製造所に移った2020年4〜5月の時点では、量産体制がまだ十分に整っていませんでした。設備はほぼ完成しているのに、どんな条件で製造するのか、どのように品質保証するのかといった「量産化に向けた体制」がまだ形になっていませんでした。
そこで、名古屋製造所、深谷製造所で工程設計していたメンバーが福井製造所に集まり、半年ほどで一気に立ち上げました。異なる経験を持つメンバーが加わることで、それぞれの工程設計や品質保証の考え方を持ち寄り、最適な形に整えていくことができました。
当時は、ほとんど毎日のように現場に入りながら調整を重ねていました。机上よりも物を見ながら現場で決めることの方が圧倒的に多かったですね。
こうした積み重ねによって、福井製造所はUACJグループの自動車パネル材の中心拠点として機能するようになりました。現在のパネル材製造は、福井製造所が中心に製造し、一部の少量品種は、名古屋製造所で生産しています。
アルミ化の壁を越える──ドア成形技術のブレークスルー
——量産体制が整ったことで、材料開発や自動車メーカーとの共同検討にはどのような広がりが生まれましたか。
八野アルミパネル材が安定して供給できるようになると、次に重要になるのは「どの部位までアルミ化を広げられるか」というテーマでした。特に難しかったのが「ドア」です。ドアインナーパネルは深絞り加工と複雑形状が求められるため、鋼板でも成形が難しい部位で、アルミニウムではさらに割れやシワが発生しやすい。設計側は軽量化のためにアルミニウムを使いたいが、生産現場では「この形状はアルミニウムでは作れない」と判断されて採用に至らない——。そんな状況が続いていました。
そこで、私たち材料メーカー側が単に「材料をお渡しする」のでなく、「どう成形すればアルミニウムでも量産できるか」まで踏み込み、成形プロセスそのものを提案する必要がありました。私が取り組んだのは、ドアインナーパネルをアルミ化するための「一体成形技術」の開発です。絞り成形を1回で行うのではなく、成形する部位を2つに分けて2回の絞り成形を行うことで割れやシワを抑える方法で、社内での研究に加えて自動車メーカーに出向し、現地で金型作製部門と一緒に実証試作や量産適用の開発を進めました。
この取り組みが実を結び、レクサス LSで世界初の「6000系合金を使用した一体成形によるドアインナーパネル」が量産化されました。従来は、成形性のよい5000系合金が一般的でしたが、6000系合金で実現したことで、高強度と軽量化を両立できる大きなブレークスルーになりました。自動車メーカーからも評価(※)され、プロジェクト表彰(技術の部)をいただいたことを覚えています。
※CSRレポート2018 P30参照
こうした成功が、自動車メーカーとの関係を大きく前進させました。アルミ材料そのものだけでなく、成形技術を含めた“使いこなすためのノウハウ”まで一緒に提案することで、より複雑な部位のアルミニウムへの適用が現実的な選択肢となり、アルミ化の可能性が一気に広がっていきました。
材料が“選ばれる存在”へ──低CO₂リサイクル材と自動車材ブランド「U-ALight(ユーアライト)」の誕生
——2020年に発売されたトヨタ自動車様の MIRAI*2で、UACJの低CO₂リサイクル材が採用されました。当時、この採用にはどのような意味があったのでしょうか。
*2 2021.02.04 当社プレスリリース 「低CO₂ リサイクルアルミ材の開発~トヨタ自動車株式会社 MIRAI ボデーパネルに採用~」に掲載
トヨタ・テクニカル・レビュー Vol.66 (P92-95)参照(PDF)
浅野2020年前後は、自動車業界全体でカーボンニュートラル(CN)やサーキュラーエコノミー(CE)が強く意識され始めたタイミングでした。当社としてもそれに先駆け、リサイクル率を高めた自動車用アルミニウム板材の開発を進めていました。
ちょうどその時期に、新型MIRAIの開発が始まり、環境対応車として“どんな素材を使うのか”がクローズアップされていました。私たちから低CO₂リサイクル材をご提案したところ、トヨタ自動車様から「MIRAIのカタログに、この材料を採用したことを載せたい」というお話をいただき、正式に検討が始まりました。それだけ期待をいただけたという意味でも、大きな節目だったと思います。
提供:トヨタ自動車株式会社様
- 写真は、トヨタ自動車株式会社様の利用合意を受けていますので他への転載、転用を一切禁じます。
新倉MIRAIはトヨタ自動車様の“環境技術の象徴”のような車種です。そこで当社の低CO₂リサイクル材が採用されたことは、単なる材料採用以上の意味がありました。自動車メーカーが環境対応を前面に出す中で、「リサイクルを進めることで社会に貢献する」という当社の取り組みが形になり、一歩先を示せた——そんな手応えがありました。
——2022年に立ち上げられた自動車板材ブランド「U-ALight」には、どのような狙いがあったのでしょうか。
浅野もともとUACJでは、お客様ごとに材料をカスタマイズしていく“一対一”のやり方が中心でした。自動車メーカーと課題を一緒に検討し、そのメーカー専用の材料を開発する──そうした仕事の積み重ねで技術を磨いてきました。
ただ、世界的には事情が少し違います。欧州や北米のアルミニウムメーカーは、いくつかの材料を“ブランド”としてシリーズ化し、「この中から用途に合わせて選んでください」という売り方が主流でした。ブランド化されていることで材料の特徴が伝わりやすく、営業・開発の両面で非常に合理的です。
新倉そこで、「UACJもブランド化して整理した方がお客様にとっても分かりやすいのでは?」という議論が営業から出てきました。研究開発の若手にも案を出してもらって、その中から選ばれたのが「U-ALight(ユーアライト)」です。
“UACJの U”、“Aluminum の AL”、“軽さの Light(Lite)”──それらを重ね合わせて、UACJらしさとアルミニウムの価値が一言で伝わる名前になりました。
浅野ブランドのために新しい材料を急いで作ったわけではなく、もともと存在していたラインナップを“選べる形”に整理して名前をつけました。そのおかげで、「これはどんな特長の材料なのか」をひと目で理解してもらえるようになりました。
これまでのようにお客様ごとに材料を開発していくわけではなく、「UACJはこういうラインアップを持っています」と世の中に分かりやすく示せるようになった──それがU-ALightの一番の意義だと思います。
リサイクルの輪をどう広げるか──自動車アルミ材が抱える“輸出”という壁、その先の可能性
——クローズドループリサイクルにUACJが取り組み始めた背景にはどのような流れがあったのでしょうか。
浅野アルミニウムは、飲料缶の世界でも知られているように、リサイクルとの相性が非常に良い素材です。ただ、自動車パネル材となると事情は少し複雑で、「合金の純度や組成」が材料特性を大きく左右するため、他の材料と混ぜてしまうと品質が保てないという課題があります。
そこで私たちが最初に着目したのが「お客様の工場で発生するプレス端材をそのまま回収する」というアプローチでした。プレスされた後に残る端材であれば、どの車種・どの組成のアルミニウムかが完全に分かるため、再び同じ材料として溶かし直して使うことができます。これがクローズドループリサイクルの最初の一歩でした。
新倉背景として、2020年頃から、自動車の軽量化素材としてのアルミニウム採用が伸び悩む時期がありました。そこで「アルミニウムの新しい価値」として改めて注目されたのがリサイクル性なんです。アルミニウムは溶かしても品質を維持しやすく、製造時のCO₂排出量も大きく削減できます。この強みをもっと発信していこう──そんな思いもあり、リサイクル材を積極的に提案するようになっていきました。
戸次飲料缶は世界中ほぼ同じ合金なので市場でリサイクルしても品質的な問題が少ないのですが、自動車で使用されるアルミニウムは、メーカーごとに組成も性質も違うため、混ざると再利用が難しくなります。
今現在は、メーカーごとに「閉じた輪」を作る クローズドループリサイクルが現実的な解決策です。
浅野最近では、この仕組みを他のメーカーにも広げる動きが進んでいて、自動車メーカーで出る端材をできる限り回収し、再び材料としてお返しする──そんな循環の輪を支えることが、UACJの重要な役割と考えています。
——自動車のアルミパネルでも、飲料缶のように“国内で循環するリサイクルの輪”を広げていきたいという課題があります。現状、実現を難しくしている要因は何でしょうか。
浅野一番大きな壁は「中古車の輸出」です。日本で生産されたアルミニウムを多く使用した自動車ほど、中古車も含め、海外に輸出される傾向があります。そのため、国内で廃車として回収できる台数が非常に少なく、スクラップの母数そのものが足りない。リサイクルを循環させようにも、「戻ってこない」という現実があります。
また、自動車のライフサイクルは10年以上と長く、飲料缶のように数カ月単位で循環する製品とは構造そのものが大きく異なります。ここも自動車リサイクルを難しくしている本質的な要因になっています。
——では、アルミニウムメーカーとして何かアプローチできる余地はあるのでしょうか。
戸次 実はヒントは「鋳物(いもの)」の世界にあります。アルミニウムのダイキャストに使われる合金は、合金の統合が進んでおり、かつ不純物の許容量が大きいため、幅広いスクラップを受け入れやすい設計になっています。こうしたアルミニウムの鋳物合金の存在が「アルミニウムはリサイクルしやすい」という評価を支えている面があります。
一方で、自動車のパネル材に使うアルミニウム合金は、強度や成形性を保つために純度管理が非常にシビアで、わずかな不純物でも性能が変わってしまいます。だからこそ、現状では「クローズドループ」で回すしかありません。
ただ、将来的にはパネル材でも「より多様なスクラップを受け入れられる汎用合金」を開発することで、飲料缶のように大きなリサイクルループを実現させる可能性も見込めます。さらに、不純物が多く鋳物等に使用されるアルミニウムスクラップを、不純物が少ない状態に戻すとともに、多少の不純物があっても性能が低下しない製造プロセスの実現に向けたアップグレードやハイアップグレードといったリサイクル技術の研究も進めています。今はまだ夢に近い話ですが、視野に入れているテーマです。
——今後、UACJの自動車パネル材事業はどのような未来を描いていくのでしょうか。
戸次自動車の世界では、鋼板からアルミニウム板への置き換えが少しずつ進み、いまやアルミニウムは主要な材料のひとつになっています。
EV化や車両構造の変化が進んでも、軽くて強いアルミニウムの価値はむしろ高まるはずです。もし求められるものが「低CO₂」や「高リサイクル性」なのであれば、それを軸に新しい技術を磨き続けたい。
アルミ缶のように、社会に不可欠な“メイン材料”として成長していける未来を描いています。
新倉自動車には、アルミニウムのほか、鉄や樹脂等の材料も使われています。その中でも「アルミニウムにしかできないこと」は確実にあります。たとえば軽量化、リサイクル性、熱伝導性、そして将来の電動化にむけた必要な性能。
これらをさらに高めていくことで、社会への貢献につながり、アルミニウムの採用量も自然と増えていくはずです。技術力の高さと低コスト化、そしてリサイクル。この三本柱を伸ばしながら、アルミニウムの可能性をさらに広げたいと思っています。
八野今後、モビリティはクルマだけでなく空の移動や小型コミューターなど、多様化していきます。「動くものを軽くしたい」というニーズはどの時代にも存在し、その第一候補となる金属はやはり「アルミニウム」です。
ただし、新しい用途では必ず課題も生まれます。それをお客様と一緒に解決し、使いやすい形にするのがUACJの役割だと思っています。
「UACJのアルミニウムだから使いたい」と言っていただける存在を目指し、これからも技術と現場の両面でチャレンジしていきたいですね。
浅野飲料缶やアルミホイルのように、自動車に当たり前のようにアルミニウムが使われている──そんな未来が理想です。
それが実現した時、アルミニウムは、本当に「社会を支える素材」になり、当社の目指す「軽やかな世界」が実現しているはずです。


