特集

成長するアジア市場での要となる、
世界トップクラスの生産拠点として

増大するアジアのアルミニウム需要に応えるため、2012年から工事を進めてきたUACJ(Thailand)Co., Ltd.(以下、UATH)ラヨン製造所は、2014年1月に操業を開始した第1期ラインに続き、2015年8月に第2期ラインが完成。
これにより、高品質と低コストを兼ね備えた、年間18万トンの生産能力を持つ一貫生産体制が確立しました。
将来は年間30万トンの生産能力を目指すアジアはもちろん、世界でもトップクラスの製造・供給拠点となる計画です。

鋳造から仕上げまでの一貫生産体制の確立に向けて

アルミニウム圧延工場の生産工程は、原料を溶解してアルミニウム塊(スラブ)をつくる「鋳造」から、「熱間圧延」、「冷間圧延」を経て、表面処理や塗装、切断などの「仕上げ」へと続きます。UATHラヨン製造所は、これら全工程を現地で実現する、日本のアルミニウム圧延メーカー初の「海外一貫生産工場」として計画されました。製品の品質や機能を決定づける前工程も含めて、現地での一貫生産を実現することで、市場のニーズに応える製品を、よりスピーディに供給することが可能になります。

2014年1月に操業を開始した「冷間圧延」「仕上げ」ラインに続けて、第2期工事として「鋳造」「熱間圧延」ラインの建設を進めてきましたが、2015年8月に完工を迎え、一貫生産が本格稼働しました。各工程とも、スケールメリットを活かした「コスト競争力」と、国内で培った高度な生産技術による「高品質」を両立し、他社を圧倒する競争力を発揮していきます。

現地従業員への技術移管を早期に実現するために

UATHラヨン製造所が安定稼働を続けていくためには、現地従業員の採用および育成を進め、早期に現地従業員を中心に稼働できる体制を実現することが重要になります。

そこで、UACJが培ってきた「ものづくり」の理念やノウハウを現地従業員に伝えるため、2012年から2013年にかけて、タイ人研修生35名を福井、深谷、日光の各製造所に招き、専任指導員による研修を実施。現場実習や技能・技術伝承、安全教育、管理者教育など、さまざまなノウハウを伝えるとともに、UACJグループの一員であるという一体感の醸成に努めました。

研修を終えた現地従業員はタイに戻り、同製造所の立ち上げに加わりました。操業開始後は、現地の中核的な存在としてリーダーシップを発揮しており、いずれは管理者として事業拠点の運営を担うことが期待されています。

周辺環境に配慮した工場づくりを徹底

UATHラヨン製造所の建設にあたっては、事前に環境アセスメントを実施し、現地の政府系機関による審査・承認を得たうえで建設を進めています。審査の過程では、周辺地域の方々のご理解を得られるよう、2箇所で2回ずつ、計4回の公聴会を実施しました。

また、生産工程においても環境への配慮を徹底。アルミニウムのリサイクルを通じて省資源化に努めています。また、排熱を再利用する省エネタイプの溶鉱炉を導入するほか、生産設備の効率的な稼働を通じて、オフィスも含めて工場全体で省エネ活動を推進します。さらに、排水や排ガス、有害化学物質の排出削減にも取り組んでいます。

その一方で、地域社会との共存共栄を重視しており、現地従業員の採用により地域の雇用を創出するとともに、地域の清掃活動や交通安全活動、植樹活動への参加、学校への図書の寄付、工場見学会の実施など、さまざまな取り組みを進めています。

グローバル供給体制の要として、段階的に生産能力を拡大

タイには、アルミニウム圧延品の需要が旺盛な自動車メーカーや飲料缶メーカーが多数進出しています。これらの企業では、従来はアルミニウム圧延品の大部分を輸入に頼っていましたが、UATHラヨン製造所の稼働によって、タイ国内の約40%の需要をまかなうことができます。

同製造所は、UACJグループが品質・技術面で優位性を持つ自動車用熱交換器材や缶エンド材などを生産・供給する計画です。現地には日系企業以外にも多くのグローバル企業が進出しており、これらの企業に加えて、成長著しい近隣諸国、さらには北米など他のエリアへの供給も視野に入れています。

このように、同製造所はアジアにおける“グローバル供給体制の要”としての役割が期待されることから、生産能力を現在の年間18万トンから、2017年までに年間20万トンにまで拡大し、さらに年間30万トン体制の実現に向けた投資を検討しています。

これら段階的な拡充により、将来的には、より幅広い分野への供給が可能になる予定であり、アジアから他エリアへの輸出拡大によって、東南アジア経済への貢献も期待されています。

UATHラヨン製造所生産数量推移の見通し
タイ新工場生産量増産イメージのグラフ

UATHラヨン製造所の概要

UACJグループは、統合シナジーの最大化に向けて、日本、タイ、米国を基軸にしたグローバル供給体制の整備を進めています。UATHラヨン製造所は、その一角を担う、アジアの中核的な製造・供給拠点です。アジア各地で需要が高まるアルミニウム圧延品の供給を担うのはもちろん、2014年1月に子会社化したマレーシアのアルミニウム箔製造・販売会社とも連携して、アジア市場のニーズに幅広く応えていきます。

また、同製造所が位置するアマタシティ工業団地は、タイ政府が国策として世界各国のグローバル企業誘致を支援しており、水害などの災害の影響を受けないように配慮した立地環境となっています。主要港にも近く、恵まれた立地を活かして、世界各地の生産拠点との連携を強化し、グローバル供給体制の要としての役割を果たしていきます。

図:タイ新工場の位置