トップメッセージ
- 代表取締役会長 CEO
山内 重德(左) - 代表取締役社長 CEO
岡田 満(右)
「将来ビジョン」の実現に向けて
中期経営計画を着実に
実行します。
2014年度を振り返って
世界のアルミニウム需要に応えるために
グローバル供給体制を積極的に強化しました。
世界のアルミニウム圧延品需要は、今後も確実な成長が見込まれています。なかでもアジア市場は著しい経済成長を背景に、缶材、箔など消費材を中心に、あらゆる分野で需要が増加しています。一方、北中米市場や欧州市場では、軽量化ニーズの高まる自動車・航空機などの輸送分野で需要が増加しています。
当社グループでは、こうした世界的な需要の高まりに応え、グローバルな成長を実現すべく、タイ、米国、日本の3極を軸としたグローバル供給体制の構築を進めてきました。
2014年度は、アジアの基幹工場と位置付けるUACJ(Thailand) Co., Ltd.(以下、UATH)ラヨン製造所において一貫生産体制の確立に向けた第2期工事を進めるとともに、北米では欧州企業との合弁による自動車用パネル材の製造・販売会社を設立するなど、積極的な投資を行いました。
また、業績については、北米のLogan Aluminum Inc.ローガン工場における設備故障の影響があったものの、経営統合による事業規模の拡大の影響が下半期からであった2013年度を、大幅に上回る結果となり、売上高は5,725億円(前期比57.3%増、合算ベース※では7.0%増)となり、損益面では営業利益は237億円(同33.2%増、合算ベース※では5.2%減)、経常利益は213億円(同27.0%増、合算ベース※では0.9%減)となりました。
当期純利益については86億円(同13.0%減、合算ベース※では26.5%減)となりましたが、これは前期に、経営統合にともなうTri-Arrows Aluminum Holding Inc.およびTri-Arrows AluminumInc.の段階取得に係る差益61億円を計上した反動によるものです。
※2013年度上半期は旧古河スカイと旧住友軽金属工業との合算。Tri-Arrows Aluminum Holding Inc.は、持分法適用会社から連結子会社に単純組替。
中期経営計画について
拡大するアルミニウム市場を見据えて、
グローバルな成長に向けて具体的な戦略を描きました。
長期ビジョンの達成に向けた「基盤強化」のステップとして
2013年10月の経営統合から、当期末で1年半が経過しました。この間、2014年3月末には、経営統合の目的である「世界的な競争力を持つアルミニウムメジャーグループ」の実現に向けて「UACJグループの将来ビジョン」を発表。さらに2014年12月には、将来ビジョンの方針を各事業の戦略へと展開していくため、UACJグループ中期経営計画「Global Step Ⅰ」を策定しました。この計画は、将来ビジョンの達成に向けた長期的なロードマップの第一段階となるもので、2015年度から2017年度までの3カ年を「基盤強化」のステップと位置付けています。(図1参照)
その策定にあたっては、経営統合以来の融合施策や統合シナジー、グローバル展開についての進捗を確認するとともに、計画期間中の事業環境を綿密に分析しました。
市場の見通しとしては、世界のアルミニウム圧延品需要は、今後もアジアや北中米、欧州などを中心に確実な成長が見込まれます。一方、供給面では、世界各地でアルミニウム圧延メーカーの大規模な設備増強が進んでおり、競争環境は一層厳しさを増すものと予想されます。また、原料やエネルギー価格の上昇基調も継続するという見通しを立てています。


こうした環境認識のもと、中期経営計画では、重点方針として「(1)自動車を中心とした輸送分野、エネルギー分野などの成長製品の拡大とアジアを中心とした成長地域の事業強化」「(2)各事業の最適生産体制の構築および技術融合の推進」「(3)先端基礎研究の強化と豊富な蓄積技術の活用による新技術・新製品の開発」の3点を掲げています。
今後はこれら方針に基づき、事業ごとの具体的な施策を立案・実施するとともに、グローバル営業体制の強化や、新技術・新製品の開発、世界で活躍できる人材育成、戦略的な設備投資などを推進していきます。これらによって、中期経営計画に掲げた目標の確実な達成を目指します。
各事業における方針と施策
3つの重点方針のもと、当社グループの中核事業である板事業では、グローバルな最適生産体制の構築や技術の融合に取り組むとともに、大型戦略投資の早期戦力化を図っていきます。
タイでは、UATHラヨン製造所において鋳造から熱間圧延までの第2期工事が完成し、2015年8月に一貫生産体制を確立しました。同製造所は、アジア市場の旺盛な需要に応えるべく、品質とボリュームの両面で当初計画からスケールアップさせており、高品質と低コストを両立したアジアトップレベルの一貫生産工場として、UACJグループのグローバル競争力を大きく高めると確信しています。
今後もさらなる需要増大が予想されることから、2017年までに年間20万トンの供給体制を確立し、さらに年間30万トン体制を実現する投資を検討しています。
北米では、燃費規制の強化により自動車パネルのアルミニウム化が加速していることを踏まえて、北米に自動車用パネル材を製造・販売する合弁会社を設立しました。新たに誕生する合弁会社は、自動車メーカーのニーズに応える高品質な製品を供給し、2016年度には年間10万トン体制での操業開始を予定しており、順調に工場建設を進めています。
国内では、製造拠点において生産品種の集約化による構造改革を進めており、2016年度には完了する予定です。具体的には、圧延工程を福井製造所と名古屋製造所に集約して生産性を向上するとともに、深谷製造所は厚板と仕上加工、日光製造所は仕上加工に特化する計画です。これにともない、余剰設備を休止して海外生産拠点に移設することで、設備投資額を抑制します。同時に、さらなる需要増が見込まれるLNG船用の厚板については、福井製造所に加えて深谷製造所でも生産する体制を整えています。
さらに、生産品種の集約にあわせて、各拠点が有する優位技術や品質管理の仕組みなどを他拠点に展開することで、使用エネルギーの低減、生産能率・歩留の向上により、生産コストの改善を推進します。
板事業以外でも、各事業それぞれの環境や強みを踏まえた施策を推進するとともに、事業間のシナジー効果を最大限に発揮することで、継続的な成長とグループ利益の最大化に貢献できると考えています。
成長領域への戦略的な設備投資を重視
さらなる成長への土台づくりとなる設備投資計画として、3年間で900億円規模の設備投資を計画しています。
投資対象としては、成長分野や成長地域に全体の60%を振り分ける考えです。私たちが見据える「成長分野」の代表格が、軽量化ニーズを背景に部材のアルミニウム化が進む自動車や航空機などの輸送分野です。また「成長地域」としては、著しい経済成長を背景に缶材や箔などの消費材を中心に全分野で需要が増大するアジア・中東地域を捉えています。
これら分野への戦略投資を重視する一方で、国内製造拠点の品種集約化により、維持更新などの一般投資は抑制する方針です。


2014年度業績 | 2017年度目標 | |
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連結売上高 | 5,725億円 | 7,000億円 |
EBITDA | 488億円 | 670億円 |
連結営業利益 | 237億円 | 400億円 |
連結経常利益 | 213億円 | 350億円 |
自己資本 | 1,723億円 | 1,950億円 |
自己資本比率 | 25.4% | 28% |
有利子負債 | 2,960億円 | 2,600億円 |
D/Eレシオ | 1.72倍 | 1.33倍 |
ROE | 5.3% | 10% |
板事業の方針と施策
- 国内製造拠点の生産品種移管によるコスト競争力強化
- 福井製造所、名古屋製造所に圧延工程を集約し、生産性を向上
- 深谷製造所は厚板と仕上加工、日光製造所は仕上加工に特化
- 国内の品種移管による余剰設備の休止
- 余剰設備のUATHなどへの移設による設備投資額の抑制
- 海外拠点を含めたグローバル供給体制の最適化
- 日本、タイ、米国の生産拠点間の生産配分最適化と相互補完体制の整備
- 技術の融合によるコストと品質の改善
- 各拠点が有する優位技術、品質管理の仕組みなどを他拠点へ展開し、使用エネルギーの低減、生産能率・歩留の向上により、生産コストの改善を推進
- UATHラヨン製造所の一貫製造の早期立上げ
- 一貫生産体制の確立
- 競争力強化による差別化
- アジア最高レベルの生産拠点への推進
- 北米自動車用パネル材(BiW)事業の推進
(Constellium社とのJV) - 当社とConstellium社の技術の融合により高品質の製品を提供
- 設備投資の実施、供給体制の整備
- 北米での素条からの一貫生産体制の整備
押出 |
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箔 | グローバルマーケットで確固たる存在価値を持つ総合箔メーカーを目指す
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鋳鍛 |
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銅管 | 差別化製品の開発・拡販と現有設備能力の最大化による収益体質の強化・推進 |
加工品 | 事業体制の効率化および国内・国外の主要事業のさらなる深化と新規需要分野の開拓 |


CSRの考え方について
ステークホルダーの皆様への責任を果たし、
社会から信頼される企業を目指します。
企業が永続的に成長していくためには、企業としての社会的責任を果たすCSR経営や、環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)を重視したESG経営が必要不可欠です。とりわけ、環境負荷の少ない金属であるアルミニウムを主力とする当社グループにとっては、事業を通じて社会全体の環境負荷低減に貢献することが、企業としての重要な責任だと考えています。
こうした認識のもと、当社グループでは、お客様や株主・投資家の皆様、仕入先、従業員、地域・社会など、多様なステークホルダーへの責任を果たすとともに、適切なコミュニケーションを取りながら、良好な関係づくりに努めています。そのための体制として、社長を委員長とし、役員、製造所長などをメンバーとする「CSR委員会」を設置し、社会の要請に広く対応しています。
この体制のもと、アルミニウムの普及拡大によるお客様や社会の環境負荷低減への貢献に加え、省エネルギー化や環境負荷物質の排出抑制、廃棄物の削減など、自らの事業活動にともなう環境負荷低減にも継続的に取り組んでいます。また、メーカーとしての責務である製品安全・品質管理の徹底や、従業員の安全衛生の確保にも、グループを挙げて取り組んでいます。
さらに、経営理念や行動規範の実践を通じた企業倫理の確立や、取締役会および監査役会による経営監督体制の強化、コンプライアンスの徹底およびリスク管理の徹底など、コーポレート・ガバナンスの強化に注力しています。
今後の見通しと株主還元について
さらなる成長にご期待いただくとともに、
変わらぬご指導・ご支援をお願いします。
2015年度の見通しについては、UATHラヨン製造所の立ち上げにかかるコスト負担が引き続きあるものの、統合効果の進展や、米国やカナダからのシェールガスの輸入開始を背景としたLNG船用厚板の販売増が見込まれます。しかし、一方でアルミニウム地金の市況価格の下落により棚卸評価関係が悪化することなどを予想しています。
これらを踏まえ、2015年度の業績は、2015年7月31日にこれまでの予想を修正し、売上高6,100億円、営業利益170億円、経常利益130億円、親会社株主に帰属する当期純利益60億円としました。
株主の皆様への利益還元としては、安定的かつ継続的な配当の実施を重視しています。当期の期末配当は、普通配当を1株につき3円としました。2015年度につきましては、1株につき中間配当3円、期末配当3円とし、年間合計で6円を予定しています。
さらに先の見通しとしては、2015年8月に一貫生産体制を確立したUATHラヨン製造所が、今後も段階的に生産規模を拡大することで、グローバル生産体制の強化が進み、海外市場における売上拡大が進むと考えています。また、注力製品の1つであるLNG船用のアルミニウム厚板については、2017年からの米国産シェールガス、2018年ごろからのカナダ産シェールガスの対日輸出開始を踏まえて、大幅な増加が見込まれており、売上への貢献が期待できます。
皆様には、今後も変わらぬご指導、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。