ガバナンス鼎談

最適なガバナンス体制を
追求し継続的な企業価値向上を
目指していきます。

プロフィール
山内 重德 代表取締役会長(中) 鈴木 俊夫 社外取締役(右) 杉山 涼子 社外取締役(左)

より充実した議論の実現に向けて社外役員との情報共有を強化

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UACJのコーポレート・ガバナンス整備の進捗状況はいかがでしょうか。
山 内
当社では、2015年6月のコーポレートガバナンス・コードの適用開始以降、この原則に基づいたガバナンス強化を推進しています。その一環として、2016年度も「取締役会の実効性評価」を目的とした各取締役・監査役へのアンケート調査を実施し、寄せられた意見・提案を取締役会の運営改善などに結びつけています。
杉 山
取締役会の議論では毎回非常に活発な質疑応答が交わされていますね。
山 内
特に社外監査役から多くの質問・発言がある一方で、社内取締役の発言が少ない気がします。もちろん、社内取締役の場合、事前にいくつもの会議に出席して議論を尽くしており、取締役会に議案が上程される段階では、内容がかなり出来上がっているという事情もあります。
鈴 木
私たち社外取締役も、社内のいろいろな会議に出席する機会があり、社内の考え方はある程度理解できているつもりです。これに対して、社外監査役の方々は、より距離を置いた立場から経営を監視するという役割上、事前のプロセスまでは把握されていないはずです。取締役会の場で多くの質問や意見が出るのは当然であり、取締役会のあり方として健全な姿といえるのではないでしょうか。
山 内
その通りだと思います。ただし、議論の内容をさらに深めるために、社外役員との情報共有の方法については今後も工夫していく必要があると考えています。これまでも事前のブリーフィングはもちろん、監査役会を取締役会の前に開催する形式に変えて、事情を熟知した社内監査役と社外監査役とで情報共有を図る機会を設けました。また、従来は取締役会・監査役会の前日までに配布していた議案関連の資料を、重要案件については3日前までに提供するように変更しました。
鈴 木
その変更によって、私たちも非常に助かっています。3日前に資料をもらえれば、それぞれの議案の内容を理解するだけでなく、社外取締役としてどのような観点から議案を検証すべきかを事前に考えることができるため、当日はより本質的で内容の濃い議論が可能になります。

社外取締役の専門性・経験を活かし
研修制度の改善や生産現場での課題解決を推進

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ガバナンスの運用における課題の一つとして、「社外取締役の活用」への注目が高まっています。
UACJではどのような取り組みが進んでいますか?
山 内
社外取締役のおふたりには、当社の経営・事業に関してより踏み込んだ意見をいただけるよう、取締役会への出席にとどまらず、時間が許す限り社内のいろいろな会議やイベントに参加いただいています。また、国内はもちろん、北米やタイなどの海外事業所への視察にも同行いただきました。名古屋の研究所にも訪問してもらい、女性研究員とディスカッションしていただいたこともありました。
杉 山
彼女たちと研修制度について意見交換するなかで、現行制度の内容に男女の考え方のギャップを感じましたので、現場の女性研究員の意見も踏まえ、この点を指摘しました。その結果、人事部門によって改善が施され、現在では素晴らしいプログラムに仕上がりました。今後も機会があれば、研修受講者の生の意見を参考にして一層の改善につなげられたらと考えています。
山 内
鋳造技術のエキスパートである鈴木さんには、アルミニウムの鋳造工程における問題解決に協力してもらっています。生産技術や製造現場のエンジニアとディスカッションし、当社のアプローチが鋳造の原理原則に適合しているかどうかの検証や課題解決に向けたアドバイスをお願いしており、今後もこの活動を継続していくことになっています。さらに先日は、タイの有力大学の先生を紹介いただいた結果、その大学との交流がスタートしました。
鈴 木
卒業生がタイに勤務している関係もあって現地の大学に人脈が広がり、チュラーロンコーン大学の先生方を紹介した次第です。
山 内
タイでは、事業拡大に向けて積極的に現地の優秀な人材を採用していく方針です。現地の大学とは、卒業生の採用はもちろん、共同研究など幅広い連携を進めていきたいと考えています。社外取締役のおふたりには、今後も専門性や経験を活かして、当社の経営やガバナンスの強化に協力いただければと思います。

グローバルカンパニーにふさわしい「ダイバーシティ」「働き方改革」を

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最後に、UACJの今後の経営に関してご意見、ご提案をお聞かせください。
杉 山
統合以降、UACJでは海外事業展開が急速に進み、M&Aや現地採用によっていろいろな国籍の従業員の数も大幅に増えています。それだけに今後は、女性従業員の活躍促進はもちろん、国籍などにとらわれず優れた人材を積極的に要職に登用していくなど、グローバルカンパニーにふさわしいダイバーシティのあり方を追求していかなければなりません。今すぐ目に見える結果を出すのは難しいかもしれませんが、5年後、10年後には、女性や外国籍の役員が当たり前のように活躍している会社になっていて欲しいと思います。
山 内
杉山さんの専門分野である環境・資源リサイクルに関してはいかがでしょうか?
杉 山
ご存知のようにアルミニウムは非常にリサイクルに適した素材です。すでにリサイクル率の高い缶材に加え、建材や自動車材、日用材などのリサイクルを促進していくことで、今後も省資源・省エネルギーの推進により大きな貢献ができると思います。さらに最近はESG投資が注目されるなど、環境だけでなく安全の徹底やコンプライアンスといった“守り”をさらに強化していくことも欠かせません。そのうえで、こうした製品・事業を通じた環境貢献を強くアピールしていけば、UACJの社会的な存在価値をより一層高めていけるはずです。
鈴 木
もう一つ重要な課題に「働き方改革」があります。これは単に勤務時間の短縮や労働生産性の改善だけの問題にとどまりません。素材産業・装置産業の製造現場では、IoTやAIなどの技術革新によって、作業者に要求される役割・能力が、将来大きく変わる可能性があります。さらに生産拠点の海外展開が進むなか、国内とは労働慣習なども異なる各地域において、こうした改革をどのように進めていくかも大きな課題となるのではないでしょうか。
山 内
貴重なご意見をありがとうございます。当社では、これからも社外取締役、社外監査役の皆さんのご意見やご指摘を参考にしながら、公正かつ透明な意思決定プロセスに基づく経営に徹し、持続的な企業価値向上を追求していきます。さらに、現状の監査役会設置会社という体制の見直しを含め、今後もグローバルカンパニーとして最適なコーポレート・ガバナンス体制についての検討を進め、企業統治のより一層の強化・高度化を図ってまいります。