ガバナンス座談会

グループガバナンスを強化し
真のグローバル
アルミニウムメジャーへ

UACJは、産業界や学術研究機関などで活躍されている識者を社外取締役や社外監査役に迎え、専門知識や経験、客観的な視点をもとに、当社の経営を監督していただいています。
今回、社外取締役・社外監査役、各2名に当社のガバナンス体制や今後の経営課題などについて語り合っていただきました。

プロフィール

  • 取締役(非常勤)鈴木 俊夫東京大学の名誉教授で、マテリアル工学が専門。豊富な学識経験をもとに、助言していただいている。
  • 取締役(非常勤)杉山 涼子廃棄物処理を専門とする、常葉大学社会環境学部の教授であるとともに、レシップホールディングス(株)取締役を務めるなど、産学で活躍。当社初となる女性取締役。
  • 監査役(非常勤)浅野 明メーカーで理事・総務部長として全社のコンプライアンスを推進。人事・経営企画等の幹部経験も活かし、統合効果発揮に資する広い視点からの発言をいただいている。
  • 監査役(非常勤)曽根 貴史商社で海外ビジネスに従事するとともに、常務執行役員や顧問を歴任。その経歴を活かし、海外展開を加速する当社経営について、厳しい視点での意見をいただいている。

重要課題を一つひとつ乗り越えながら
経営組織の一体感を高めていく

――当社のコーポレート・ガバナンスをどう評価されていますか?

浅野 統合して3年ほど経ちましたが、UACJのガバナンス体制は、発足時からすでに日本企業として水準以上の安心感のあるレベルには達していました。ただし、同じアルミニウムメーカーでも旧古河スカイと旧住友軽金属工業では、培ってきた歴史や組織風土、そして事業戦略なども違いますから、経営組織を一つにまとめていくのはかなり大変だったと思います。

曽根 正直申し上げますと、経営統合後、最初の取締役会に出席した時は、企業風土の違いが顕著に表れ「大丈夫かな」と心配になったのも事実です。

鈴木 確かに最初の頃は、多少ギクシャクとしていましたね。しかし、その後、海外M&A投資など重要な意思決定を下していく度に、取締役会メンバーの間の意思疎通、問題意識の共有が急速に進み、良い意味での経営の一体感、チームワークが育まれていきました。それを目の当たりにして、“企業の風土というものは、このように醸成されていくものなのか”と実感しました。

杉山 私は、昨年の6月に社外取締役に就任したので、過去の経緯は存じ上げませんが、現在の取締役会はとても円滑に運営されていると思います。また、事業内容への理解を深めるために、毎月のグループ事業報告会に出席させていただいているのですが、この会議の参加者の発言からも“皆で新しい会社をつくり上げていこう”という熱気を感じます。

曽根 もちろん、まだ道半ばではありますが、全体としては順調に組織・ガバナンスの融合が進んでいると評価できるのではないでしょうか。

事前の検討プロセスを確認し
取締役会の意思決定をチェック

――海外M&A投資などの意思決定についてはどのようにチェックしていますか?

浅野 海外M&A案件は、UACJの将来を左右する重要案件です。それだけに、社外監査役として、この事案は関連部門できちんと議論が尽くされたものなのか、相応の社内コンセンサスが得られているかなどを確認するようにしています。

杉山 取締役会では時間に限りがありますから、すべての議案を最初から最後まで精査していくわけにはいきません。ただし、取締役会に上程されるまでには、すでに社内で相当に議論されてきたはずですから、その検討プロセスを確認することは非常に大切だと思います。

浅野 ですから、これまでの議論内容について担当者に質問するのはもちろん、それでも不十分であれば会議の議事録に目を通しますし、本当に重要な案件の場合は、事前の会議そのものに出席させていただくこともあります。

さらなるガバナンスの強化に向けて
問題点を拾い上げる仕組みづくりを

――当社のガバナンスをさらにレベルアップさせていくために何が必要でしょうか?

曽根 一つはコーポレート・ガバナンスに関する意識をグループ全体に浸透させていくことです。「コーポレート・ガバナンスとは何なのか」「何のためにガバナンスを強化しなければならないのか」を、会長・社長・取締役などの経営層だけでなくグループ全社員が認識する必要があります。そして、もう一つの課題が、ガバナンスの実効性を高めるための仕組みづくりです。たとえば、規則に沿ったルーティーンのチェックだけをした結果として「問題なかった」で終わってはいけない。たとえルールに反していなくとも“何も問題がない”企業など存在しないのですから。

鈴木 所定のルールに則って経営をチェックしていくだけにとどまらず、企業経営に内在する問題点、リスクなどをもっと積極的に拾い上げていくシステムが必要というわけですね。

曽根 その結果をもとにPDCAサイクルを回し続けて経営の質を一段とレベルアップさせていくことが重要ではないでしょうか。

世界で戦えるアルミニウムメジャーとして
グローバル経営力と技術力のさらなる強化を

――当社がこれから世界のアルミニウムメジャーとして持続的成長を果たしていくための提言をお聞かせください。

曽根 統合以来、UACJはアジアや北米での投資を加速していますが、グローバル経営という面では、まだまだ経験が足りないと思います。海外事業では日本の常識が通用しないことが多々あります。また、海外M&A案件では、買収後のハンドリングが極めて重要になります。これまで順調に利益を上げてきた会社だからといっても、現地任せにするのではなく、ハンズオンできめ細かくマネジメントしていけるUACJの人材が不可欠です。

鈴木 そのためには専門性やスキルを備えた人材を積極的に採用していく必要があります。同時に、現在の管理職~中堅クラスの人材についても意識改革を促し、自ら先頭に立って海外ビジネスを動かせる存在にしていくことが重要です。

杉山 UACJが今後グローバル経営を強化していく上で、ダイバーシティが一つのキーワードになると考えています。先日、名古屋の技術研究所で女性の専門職の方々にお話をうかがう機会があり、非常に高いモチベーションを持って活躍されていることを実感しました。また、女性の活躍促進に加えて、M&Aなどによってグループの一員となったさまざまな国籍の社員についても、それぞれの人材が持てる能力を最大限に発揮してもらえるようにマネジメントしていくことが大切です。さらに、企業の環境経営に対する関心も世界的に高まっていますので、UACJのアルミニウム素材のリサイクルやCO2削減などへの取り組みについても、国際社会に向けて積極的に情報発信していくべきではないでしょうか。

浅野 そういったグローバル経営力の強化に加え、中長期的な視点から技術力をさらに強化していくことが重要だと考えています。UACJは、「世界的な競争力を持つアルミニウムメジャーグループ」というビジョンを掲げていますが、その“世界的な競争力”の最大の源泉となるのは、やはり技術力だと思います。

曽根 グローバル市場で競争していくためには、生産技術の革新によるコストダウンや品質向上が欠かせませんし、アルミニウムメーカーとして新市場・新用途を開拓していくには、素材に関する基礎研究や製品開発を強化していく必要があります。

浅野 UACJは、現在、大型の先行投資を積極的に推進しており、それらを軌道に乗せるべく全社を挙げて努力しているところですが、この投資局面を乗り越えれば、世界でも屈指の優良なアルミニウムメジャーへと飛躍できると期待しています。そうした優位性をさらに高めるためにも総合的な技術力をより一層強化していくことが必要だと思います。

鈴木 社内の方々と立場は異なりますが、UACJの持続的な成長や企業価値向上を実現していくという目標は私たちも同じです。これからも各自の知識や経験を活かしながら、この会社を盛り立てていきましょう。