財務報告

財政状況および経営成績の分析(連結ベース)

1.経営成績について

事業環境

2015年度は、米国や欧州では緩やかな回復が続いたものの、新興国の成長鈍化が表面化するなど、景気の先行き不透明感が高まりました。

このような環境下にあって、アルミニウム圧延業界では、板・押出合わせた出荷量が、前年比微減ではあるものの、2年連続で200万トンの大台を突破しました。板製品では、主力の飲料缶や自動車材の需要が堅調に推移し、箔地や輸出のマイナスを補って前年比増となりました。押出製品については、大半の分野で需要が低迷し、前年比減となりました。

伸銅品業界では、家庭用エアコンの需要は前期並みでしたが、在庫増加の影響により生産台数は減少しました。業務用エアコンも建築および公共工事需要の停滞により、生産台数は低調に推移しました。

連結経常損益分析

業績総括

2015年度の当社グループの売上高は、販売量の増加や為替換算の影響等があったものの、昨年5月以降の急激な地金価格下落による影響を受け、5,757億円(前期比0.6%増)と、ほぼ前期並となりました。

損益面では、地金価格の下落による棚卸評価の悪化や、昨年8月から一貫生産を開始したUACJ (Thailand) Co., Ltd.(以下、UATH)ラヨン製造所の立ち上げコストの増加などにより、営業利益は152億円(同35.8%減)、経常利益は120億円(同43.7%減)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に発生した北米のローガン工場での設備故障による損失等に対する受取保険金を特別利益として計上したものの、51億円(同41.0%減)となりました。

アルミ圧延品事業

板製品に関しては、主力となる缶材が、UATHラヨン製造所が一貫生産を開始したことに加え、北米ローガン工場における設備故障の影響もなくなったことから堅調に推移しました。また、自動車分野やLNG船向けの厚板も好調でした。

押出製品に関しては、オールアルミニウム製熱交換器向けが大きく伸長したものの、全般的には需要が低調でした。

これらにより、2015年度の売上高は4,609億円(前期比2.0%増)、営業利益は急激な地金価格下落に伴う棚卸評価関係の悪化や、UATHラヨン製造所の立ち上げコスト増により、181億円(同22.1%減)となりました。

伸銅品事業

2015年度は、家庭用エアコン、業務用パッケージエアコンともに生産台数が低調に推移し、当事業の主力である空調用銅管の需要も減少しました。これらの結果、売上高は469億円(前期比7.3%減)、営業利益は3億円(同67.5%減)となりました。

加工品・関連事業

2015年度は、一部の事業譲受などにより売上高は増加しましたが、下期になって主力商品の売上が減少したことなどにより、売上高は1,671億円(前期比3.4%増)、営業利益は37億円(同17.9%減)となりました。

2. 次期の見通しについて

対処すべき課題

経済情勢の見通しは、世界経済全体に不透明感が継続するものと想定されます。国内でも、企業の景況感や消費者マインドが悪化しており、今年4月の熊本地震の影響もあって、今後の見通しは不透明です。また、少子高齢化の進展や、企業の生産拠点の海外移転などにより、中長期的には厳しい事業環境が想定されます。一方、海外では中東情勢などの地政学的リスクや中国の成長鈍化、資源市況の低迷による資源国の落ち込みなど、米国の回復基調を相殺する情勢が見込まれます。

このような経済環境下において、当社グループは「世界的な競争力を持つアルミニウムメジャーグループ」の実現に向けて、2014年12月に発表した、2015年度~2017年度の3カ年のUACJグループ中期経営計画「Global Step Ⅰ」に掲げた内容を、各事業へと具体的に展開し、環境変化に強い収益基盤の確立と持続的な成長に取り組んでいきます。

次期業績見通し

2016年度の業績予想については、販売面では、缶材や自動車材などで引き続き増加が見込まれます。コスト面では、統合効果の進展や、UATHラヨン製造所の立ち上げにかかるコスト負担の縮小が見込まれます。

これらを踏まえて、通期では売上高6,000億円、営業利益245億円、経常利益200億円、親会社株主に帰属する当期純利益90億円を見込んでいます。実力ベースの収益性指標であるAdjusted EBITDAも34億円増の557億円と想定しています。

とくに経常利益については、2015年度の120億円から大幅な増加となる見込みです。その内訳としては、棚卸評価関係の好転で32億、UATHラヨン製造所の立ち上げコストの減少により24億円、統合効果も含めたコストダウンで20億円、販売関係の好調によって5億円、合計で80億円の増加を想定しています。

アルミ圧延品事業

缶材についてはUATHラヨン製造所の一貫生産の増加が寄与するものと見込んでおり、自動車関係はパネル材、熱交換器材ともに引き続き好調と見ています。また、国内の建材も需要が回復し、海外向けのエアコン用フィン材も旺盛な需要が見込まれます。これらによって、売上数量全体では前期比9.4万トン増の106.4万トンを見込んでおり、統合後、初めて100万トンを超えることとなります。

2016年度の業績は、売上高4,611億円、営業利益248億円を見込んでいます。

伸銅品事業

在庫等の調整も進み、主力であるエアコン用銅管需要の伸長が予想されることから、売上は回復してくると見込んでいます。

2016年度の業績は、売上高528億円、営業利益15億円を見込んでいます。

加工品事業

2016年4月に買収が完了した米国の大手自動車構造部材メーカー、Whitehallの売上が寄与し、売上、利益ともに大きく拡大する見込みです。

2016年度の業績は、売上高1,863億円、営業利益50億円を見込んでいます。

3. 株主還元について

配当政策について

当社は、株主の皆様に対する配当の実施を利益還元の重要な施策と考えています。安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としながら、業績の動向や、企業価値向上のための投資や競争力強化のための研究開発資金の確保、財務体質の強化などを総合的に勘案して判断していきます。

配当については、中間と期末の年2回の実施を基本方針としており、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会により決定します。

2015年度の期末配当は、中間配当と同様に1株当たり3円としました。2016年度の配当については、1株当たり中間配当3円、期末配当3円で年間合計6円を予定しています。

4. 財政状態について

貸借対照表分析

2015年度末の資産合計は、UATHラヨン製造所への設備投資や、円高にともなう為替換算の影響、たな卸資産の減少などにより、6,625億円(前期末比2.3%減)となりました。

負債合計は、為替換算の影響や仕入債務の減少などにより、4,840億円(同1.4%減)となりました。

純資産合計は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加があったものの、為替換算調整勘定の減少などにより、1,786億円(同4.6%減)となりました。

研究開発

当社グループの研究開発を担う「技術開発研究所」では、アルミニウムという素材がもつ未知の可能性に挑むとともに、お客様の多様なニ-ズにお応えするため、基盤技術の開発から製品および利用技術の開発まで、トータルな研究開発を進めています。

時代を一歩先取りした革新的な製品・技術開発のスピードアップを図るため、世界最先端の研究機関とも積極的に連携しています。また、グローバルに対応できる人材の育成とコンプライアンスの徹底にも注力しています。

なお、2015年度の研究開発費用は総額で46億円となりました。

アルミ圧延品事業

主力となるアルミニウム板製品については、缶材、自動車ボディシート、自動車用熱交換器、エアコン、IT関連機器、船舶用厚板、電解コンデンサ、リチウムイオン電池用集電体など、幅広い分野において、多様化・高度化するお客様のニーズに応えるための研究開発に注力しました。

また、生産性の向上や製造コスト・環境負荷の低減に向けて、ハード、ソフト両面から新規製造プロセスの開発を進めています。さらに、次世代航空機への適用を目指した新合金の開発を目的に、経済産業省委託事業である「革新的新構造材料等技術開発プロジェクト」に参画しています。

押出製品については、強みとする自動車用熱交換器材の開発とともに、航空機や自動車、空調用熱交換器などの新規需要に向けたアルミニウム合金材料の開発を進めています。

鋳鍛製品については、世界でも数社しか生産できないコンプレッサホイールなど、付加価値の高いアルミニウム部材の開発に積極的に取り組んでいます。

2015年度は、熱交換器用材料や国内、北米向け自動車用ボディシート材などで成果がありました。航空機用材では、加工性や耐食性に優れた新合金AA2013の開発について高い評価を得て「日本アルミニウム協会開発賞」を受賞しました。

なお、アルミ圧延品事業の研究開発費は、45億円となりました。

伸銅品事業

伸銅品事業では、エアコン用高強度銅管の開発を進め、より高性能な省エネ型エアコンの開発・量産に大きく貢献しています。エアコン用や建築配管用銅管については、耐食性を向上させる合金開発や機器開発を推進しており、これら技術を普及させるためのPR活動にも精力的に取り組んでいます。

2015年度は、内面溝付銅管の再結晶組織に及ぼす造管条件の影響調査について高い評価を得て、日本銅学会第49回論文賞を受賞しました。

なお、伸銅品事業の研究開発費は、1億円となりました。

加工品・関連事業

加工品・関連事業では、高性能かつ精密なパワーコントロールユニットなど冷却デバイスの開発を進めており、今後、さらなる需要増大が期待される高性能用途への拡販を図っていきます。空調熱交換器分野では、当社グループの技術総合力と材料・評価分野での蓄積技術を駆使して、オールアルミニウム製熱交換器の量産を開始しました。

とくに2015年度は、燃費規制の高まりを背景に軽量化が進む自動車産業に向けて、全世界対応型超軽量アルミニウム製バンパーシステムの量産化に取り組みました。2016年度は国内や北米での需要増大を踏まえ、アルミニウム部品の適用拡大に向けた取り組みを強化していきます。

なお、加工品・関連事業の研究開発費は、0.1億円となりました。

設備投資

2015年度の設備投資は、成長分野・地域への戦略投資が181億円、既存設備の維持更新に対する一般投資が124億円で、合計305億円となりました。

戦略投資の内訳としては、UATHラヨン製造所での一貫生産体制が2015年8月に完成し、稼働を開始しました。また、北米での需要増大に対応するため、北米ローガン工場において鋳造能力を含めたアルミニウム板圧延能力の増強に向けた投資を進行中です。

2016年度は、戦略投資245億円、一般投資115億円の合計360億円を予定しています。

資本の財源および資金の流動性についての分析

キャッシュ・フロー分析

2015年度末における現金及び現金同等物は、前期末から21億円減少し、188億円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下の通りです。

営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は、仕入債務の減少を主因とした運転資金の増加により、前期比15.9%減の225億円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動において使用した資金は、UATHラヨン製造所の工事の進捗により、有形固定資産の取得による支出が減少したことにより、前期比30.0%減の348億円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により調達した資金は、投資活動による資金の需要が減少したことにより、前期比56.5%減の112億円となりました。