日本での今UACJ Co., Ltd.特集 日本での今

UACJ Co., Ltd.品種移管と研究開発の成果を
競争力の源泉にしていく。

プロフィール

(左)土屋 博範
取締役兼常務執行役員 生産本部長

1980年古河電気工業(株)に入社。2011年に当社(当時は、古河スカイ(株))取締役、2013年には取締役兼常務執行役員に就任、現在に至る。長年にわたり、生産部門の業務に携わる。現在も生産本部長委嘱。

(右)渋江 和久
取締役兼常務執行役員 技術開発研究所長

1980年4月住友軽金属工業(株)に入社。一貫してアルミニウム材料の研究・開発を手掛ける。研究開発センター第二部長、同第五部長などを経て、2010年4月に執行役員、研究開発センター副所長に。2013年4月から執行役員 研究開発センター所長に就任。2013年10月、(株)UACJ 常務執行役員 技術開発研究所長に就任。2014年6月から現職。

国内工場の品種移管を進め、さらなる競争力強化を図る

UACJは、2013年10月の経営統合以来、国内の生産体制再構築に力を注いでいます。統合前の2社は、同様の製品ポートフォリオを有していたため、工場ごとに生産品種を絞り、より効率的な生産体制を追求していきました。

「UACJはグローバル事業を強化していく方針ですが、現時点では国内事業での利益が経営のベースとなっているのも事実です。それだけに、国内生産の最適化による収益性向上は統合を成功させるために極めて重要な施策だと考えています。品種移管にあたっては、お客様との関係もあるため、難しい調整作業が必要でしたが、各工場とも順調に移管作業が進み、2015年度には移管作業全体の約6割まで進捗しました。2016年度にはほぼ予定通りの品種移管が完了する見込みです」と、土屋取締役は述べます。

図の通り、国内最大級の熱間粗圧延ラインを有する福井製造所を、その能力を最大限に発揮できるよう、缶材とLNG船用厚板の基幹工場として位置付け、他の品種を他工場に移管しました。一方、名古屋製造所は、缶材の生産を福井に移管する代わりに、研究開発部門との密接な連携が欠かせない自動車材、印刷版用板材、フィン材などの基幹工場に位置付けています。同様に、深谷製造所は厚板の基幹工場に、日光製造所は精密特殊材の仕上げ専門工場としています。土屋取締役は続けます。「これら品種移管の目的は、福井・名古屋をはじめとする各工場の生産効率を高めて事業競争力を強化していくことにあります。したがって、品種移管の完了後も各工場ではさまざまな施策を継続的に実施し、QCD(Quality:品質、Cost:費用、Delivery:引渡)それぞれにおける競争力をさらに向上させていきたいと考えています」

国内生産拠点の生産品種集約イメージ

研究開発リソースを最適配置し、新製品開発と次世代基盤技術の強化を推進

UACJグループでは、技術開発研究所を中核に研究開発を進めています。技術開発研究所は、名古屋製造所内に本拠を置き、福井製造所と深谷製造所内にも分駐しています。これは研究リソースを名古屋に集中・一元化すると同時に、他の主要製造拠点にも一定の研究開発機能を持たせることによって、より多くのお客様へのアクセスや生産現場との円滑な連携を実現するためです。この研究開発体制のもと、新製品・新技術の開発と、基盤技術の強化・深化を図っています。

技術革新の進展にともない、現在の工業製品には、鉄やアルミニウムなどの金属材料はもとより、樹脂材料やセラミックス、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)といった複合材料まで、さまざまな素材が用いられるようになりました。UACJが今後も持続的な成長を果たしていくためには、アルミニウム業界内の競争に加えて、これら多様な素材との競争にも勝ち抜いていかなければなりません。渋江取締役は次のように述べます。「最近、製造業へのIoTやAI(人工知能)などの適用が進展してきており、ものづくりの世界に大きな変革が起こりつつあります。近い将来、アルミニウム業界の生産現場にもこれらの先端技術が用いられることになるはずです。こうした技術革新に適確に対応していくためにも、地道で着実な材料開発によって事業競争力を強化していきます。さらに、お客様や生産現場の要望に俊敏かつ能動的に行動できるエンジニアの育成に力を注いでいきます」

COLUMN

お客様との共同開発や国家プロジェクトへの参画など、
ネットワークを活用した研究開発を積極的に推進

アルミニウムの優れた素材特性を最大限に発揮させるためには、エンドユーザーのニーズを熟知した製品メーカーとの密接な連携が欠かせません。そこで技術開発研究所では、お客様との共同研究に注力すると同時に、お客様と同じ製造装置を導入して試作・検証を実施することにより、高精度の評価・解析を実現しています。さらに、次世代航空機をターゲットとした新合金開発を目指す経済産業省委託事業「革新的新構造材料等技術開発プロジェクト」などの国家プロジェクトへの参画や、大学・研究機関との共同研究を通じて高度な技術課題に挑戦するなど、独創的な技術開発に力を注いでいます。