北米での今①Tri-Arrows Aluminum Inc.特集 北米での今①

Tri-Arrows Aluminum Inc.UACJグループの総合力を活かし、
成長著しい北米市場で競争力を高める。

プロフィール

Henry Gordinier
Tri-Arrows Aluminum Inc. 社長

金属系の商社で、財務リスク管理を経験した後、1999年にARCOアルミニウム(現TAA)に入社し、リスクマネジメント、ビジネスマネジメントに従事する。その後、アルミニウム業界を離れて異業種の医療業界へ転職。リスク戦略に携わった後、2014年から、現在のTAAに再入社。2016年1月から、同社社長を務める。

世界最大規模の生産拠点と、
強く柔軟な企業文化で優位性を確保

Tri-Arrows Aluminum Inc.(以下、TAA)は、数十年にわたり米国で飲料缶用のアルミニウムを製造・販売し、業界で抜きん出たポジションを築いてきました。アルミニウム圧延工場としては世界最大規模で最もコスト競争力のあるローガン工場の過半数の株式を所有し、急成長の見込めるマーケットに注力しています。世界のアルミニウム圧延工場の多くが年間約18万トン規模であるのに対し、ローガン工場は年間約90万トンもの生産能力を誇り、TAAはそのうちの年間30万トンの生産ラインを所有しています。また、ローガン工場は、原材料の約80%をリサイクルアルミニウムでまかなっています。これにより環境負荷低減に貢献するとともに、原材料コスト削減を通じた競争力向上を実現しています。

自立的で積極的な人材も大きな強みです。一人ひとりが自分の役割を理解し、より高い生産効率を追求していく企業文化が根付いているのです。TAAの最大の価値は、この人材と非常に強く柔軟性のある企業文化にあるとTAAのゴーディナー社長は強調します。「かつてTAAは、新たな投資を行なわずに、コストを管理しながら生産量を増加させる必要に迫られました。そして創意工夫を凝らしてそれを成し遂げた結果、大きなイノベーションと目標を必ず達成するという強い企業文化を醸成できたのです。こうした企業文化を持つTAAとアルミニウムを本業とするUACJが力を合わせることで、非常に大きな相乗効果を発揮できるはずです」

UACJグループの一員としてさらなる成長を目指す

アルミニウムのグローバルプレイヤーを目指すUACJグループの一員となったことによって、TAAには新たなビジネスチャンスが生まれつつあります。「TAAは北米での事業が中心でしたが、UACJはアジア市場にも精通しています」とゴーディナー社長は語ります。「UACJとのパートナーシップによって、アジア市場への理解を深める機会を得るとともに、今後、グローバルな新興市場で競争していくための足掛かりができました。その結果、社内に新たな活力が生まれつつあります」

UACJチームとの情報交換も活発に行なわれており、ローガン工場の運営強化、自動車用パネル材の製造・販売の移管などにおいて相乗効果が発揮されています。業務提携契約を結ぶConstellium-UACJ ABSとは、品質・性能の改善に向けて、今後、母材となるスクラップの管理など幅広い活動で連携を強化する計画です。「米国の上場企業は、四半期ごとに経営計画を進めていくのですが、短期的な成果を重視するあまり長期的視点に立った戦略を見失いがちになることもあります。これに対して、常に10年、20年といった長期的な視点から経営を考えるUACJの姿勢は、事業計画を策定していく上で、私の目には非常に新鮮に映りました」とゴーディナー社長は語ります。「実際、ローガン工場を拡大・成長させるために、新たな先行投資を決定したのも、そんな長期的な視点に基づくものだと思います。UACJグループの一員となったことによって、TAAはさらなる飛躍に向けた成長基盤を確立できたのです」

飲料缶市場でのシェアを維持しながら、
自動車関連市場でのシェアを着実に伸ばす

TAAは、これまでの飲料缶向けのアルミニウムに加えて、今後は自動車用のアルミニウム材の生産を推進し、バランスのとれた事業ポートフォリオの形成を目指します。飲料缶市場は、健康志向によって炭酸飲料系の需要が減少傾向にあるものの、ビンからボトル缶へと移行する流れが勢いを増しています。こうした飲料缶市場の動向や新たな自動車関連の需要に対応するため、ローガン工場の生産ライン拡大を進めています。これが完了すると、同工場におけるUACJグループ持ち分の年間生産能力はさらに拡大する予定です。今後も市場の状況を詳しく把握しつつ、Constellium-UACJ ABS向けの自動車用パネル材の母材供給をさらに増加していく予定です。

北米市場において今後も存在感を出し続けるために、TAAが重視しているのは、既存事業の『一貫性』を維持しながら、新規事業による市場ポジションの獲得を慎重に進めていくという戦略です。ゴーディナー社長は、「私たちは、長年、お客様の期待に応えて収益を上げてきた事業をこれからも大切にしていきます。このTAAの『一貫性』は、お客様からも高く評価されています。同時に、私たちはUACJグループの今後の成長に欠かせない自動車用パネル材の市場にも継続して参入していく必要があります。これらを実現するためには、TAAの企業文化を十分考慮しながら戦略を構築することが重要です」と語ります。

こうした方針のもと、TAAは飲料缶市場における20%という現状のシェアを維持しながら、自動車用パネル材市場でのシェアも拡大させていく計画です。

北米の自動車用パネル材市場需要

原材料の約80%にリサイクル材を使用し、
環境負荷低減に貢献しています

Ken Purdue Logan Aluminum Inc. 工場長

ローガン工場は、製品の多くをリサイクル原料から製造する環境にやさしい工場です。アルミニウムは、何度でも無限にリサイクルすることが可能であり、当工場の生産工程で発生する内部のスクラップ材料もほとんどが再資源化されています。また、UACJは外部からもアルミニウムのスクラップ材を集めてリサイクルしており、より幅広い環境貢献を実現しています。さらに、社員の多くが共同募金団体「ユナイテッドウェイ」を支援する地域活動に参加するなど、地域社会との共生を目指しています。