UACJのグローバル戦略

双方向コミュニケーションを加速させ、
真のグローバルプレイヤーとして
新たなビジネスチャンスを確実に捉える。

中野 隆喜取締役 兼 専務執行役員
海外事業戦略部、広報IR部担当
Tri-Arrows Aluminum Holding Inc. 取締役社長

「新興国の経済発展」と
「自動車軽量化」が
アルミニウム市場の
新たな成長を牽引する

アルミニウム産業の事業環境は、現在、大きな転換期に差し掛かっています。その一つが、お客様のビジネスがグローバル化していることです。自動車、機械、エレクトロニクス、製缶など、アルミニウムの主要なお客様は、国内のみならず欧米や中国・アジアなど世界の主要な地域に生産拠点を展開しています。その結果、私たちアルミニウムメーカーにも“世界中どこでも同じ品質のアルミニウム製品”を安定供給できる体制の構築が求められています。

グローバルマーケットの中でも、とりわけ大きな成長性を秘めているのが、東南アジアをはじめとする新興国市場です。アルミニウムの消費量はその地域のGDPと相関関係があります。それだけに、これから東南アジア、インド、中東、アフリカといった新興国が経済発展を遂げ、人々の生活水準が向上するとともに、アルミニウム需要が大きく拡大していくのは間違いありません。

一方、先進国市場においても「自動車の軽量化」というトレンドによって、新たな成長領域が生まれつつあります。環境規制が厳しさを増すなかで、世界の自動車メーカーは、燃費向上や電気自動車の航続距離改善を目的とした車体の軽量化を積極的に推し進めています。その有効な手段として、パネル材や構造材に鉄よりも軽量なアルミニウム素材を採用する動きが活発化しているのです。しかも従来のように一部の高級車に限らず、米国で人気のピックアップトラックなど、量産大衆車においてもアルミニウムの採用が広がりつつあります。自動車の量産が始まってから1世紀余り、パネル材や構造材の主要な素材として長らく鉄が用いられてきた歴史を考えると、今回の自動車軽量化のトレンドは、アルミニウム産業にとって千載一遇のビッグチャンスでもあります。

日本のアルミニウム圧延業界上位2社の経営統合によってUACJが発足した最大の目的は、こうしたグローバルな市場の環境変化を適確に捉え、新たなビジネスチャンスを事業成長に結びつけることにあります。ご存知のようにアルミニウムは装置産業ですから、事業のスケールメリットが競争力を大きく左右します。2社統合とともに、日本・北米・タイの3極によるグローバル供給体制を確立し、年間100万トン超という世界屈指の生産能力を実現したことは、今後、当社がグローバル市場で競争する上での大きな武器となります。

とりわけ経済発展が著しい東南アジア地域では、現地の旺盛なアルミニウム需要に応えていくために、タイでUATHラヨン製造所の生産増強を推し進め、2015年8月には年間20万トンの生産能力を有する一貫生産体制を確立しました。今後も同工場をグローバル供給体制の要として生産能力の拡大を図っていきます。

さらに自動車の環境規制で先行する米国市場での事業体制強化を図るため、自動車用パネル材の製造販売を担う合弁会社の設立や、自動車用アルミニウム構造材・部品事業を展開する有力メーカーの買収、現地でのアルミニウム母材供給体制の強化など、積極的に投資を実行しています。

3極によるグローバル供給体制
GDPに対するアルミニウム消費量

双方向のコミュニケーションを
活性化し
多様性を重視した
グローバリゼーションを追求

このように統合以降の積極的な設備投資やM&Aによって、UACJのグローバル事業体制は着実に強化されつつあります。ただし、当社がこれから真のグローバルプレイヤーとして世界のアルミニウムメジャーと互角に戦っていくためには、事業の規模的拡大を追求すると同時に、グローバルな組織マネジメントの強化が欠かせません。

タイや米国などにおける新たなグローバル事業を、いかにして確実に軌道に乗せ、東南アジア市場の成長や自動車軽量化といったビジネスチャンスを捉えるか̶̶そのための重要なキーワードとなるのが“双方向コミュニケーション”です。当社は、日本発のアルミニウム企業グループですが、だからといって日本的なビジネスの進め方やものづくりの手法を、そのまま海外法人に持ち込むといった“一方通行のグローバル化”では十分な成果は望めません。

大切なのは、UACJの企業理念や事業戦略、日本的なものづくりの優れた点などをていねいに伝えて理解してもらうと同時に、現地のビジネスやワーキングスタイルへの理解を深め、相互の良い部分を活かしていくことにあります。この双方向のコミュニケーションが活発になれば、A+B=ABではなく、AとBという異なる文化・価値観・ビジネススタイルの融合・擦り合わせによって、新たにCというより高次元の価値を創出していく弁証法的なグローバリゼーションが実現するはずです。

UACJでは、こうした双方向コミュニケーションを通じて、これからも世界各市場で多様性を重視した新時代のグローバリゼーションを追求します。そして、世界的な競争力を備えた真のアルミニウムメジャーグループとして持続的な成長を果たしていきます。