Furukawa-Sky Review No.4 (April 2008)

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技術紹介

アルミニウム合金の高温成形技術
High-Temperature Forming Technology for Aluminum Alloys

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自動車の軽量化を目的として、ボディパネルへのアルミニウム合金の適用が拡がりつつあります。しかし一般にアルミニウム合金のプレス成形性は鉄鋼材料に比べて劣ることから、その改善が大きな課題となっています。これを改善する方法の1つに高温成形があります。結晶粒が10μm以下の微細粒組織の合金を高温で変形すると超塑性と呼ばれる現象が発現して、室温での伸びの10倍以上に相当する300%超の巨大な伸びが得られます。当社ではこの現象を利用した超塑性成形方法と超塑性合金について以前から研究を行い、超塑性5083アルミニウム合金アルノービ®・1を開発しました。この合金は優れた超塑性特性に加えて、強度、溶接性、表面処理性などの優れた実用特性も併せ持つことから、自動車・航空機・建材などの分野において国内外で幅広く使用されています。
最近、当社と新日本製鐵(株)は本田技研工業(株)殿と共同で、この成形技術を応用して、新たに高温高速ブロー成形技術を開発しました。この高温高速ブロー成形技術は、Al-Mg合金の一つである5182合金を素材として、複雑形状の短時間成形を可能としたものであり、従来の超塑性成形に比較して、大幅なコストダウンおよび生産性の向上が達成されました。これら2つの成形技術は一見似ていますが、素材のミクロ組織、最適成形条件、成形品の形状など種々の点で大きく異なります。この違いは主に成形中に働く高温変形メカニズムの違いに起因します。ここでは、これら2つの高温成形技術の特徴について、主に変形メカニズムの相違に着目して紹介します。

通常のプレス成形と比較した超塑性成形と高温高速ブロー成形の特徴(表中の数値は典型値)
Comparison among normal press forming,superplastic forming and high-temperature highspeed blow forming.

通常のプレス成形と比較した超塑性成形と高温高速ブロー成形の特徴(表中の数値は典型値)

超塑性成形の適用例
Application examples of superplastic forming.

超塑性成形の適用例

超塑性成形と高温高速ブロー成形の変形メカニズムと関連する特徴の比較
Comparison of deformation mechanism and related characteristics between superplastic forming and high-temperature high-speed blow forming.

超塑性成形と高温高速ブロー成形の変形メカニズムと関連する特徴の比較

超塑性成形および高温高速ブロー成形における変形機構の模式図。
(a)超塑性成形における粒界すべり、(b)高温高速ブロー成形における溶質ドラッグ。
Schematic diagrams of deformation mechanisms in(a)superplastic forming and(b)high-temperature high-speed blow forming.

超塑性成形および高温高速ブロー成形における変形機構の模式図。

正のm値を有する材料変形時のくびれ発生抑制の模式図。
(a)微小くびれが発生すると、その領域において局所的にひずみ速度が上昇し、変形応力が増大する。(b)微小くびれ部での変形がストップし、これ以外の領域が変形する。(c)微小くびれが消滅して、再度均一変形が継続する。
Inhibition of necking during deformation in a material with a positive m value is schematically shown.(a)On necking, flow stress increases with increasing strain rate in a deformation concentrated region.(b)No more deformation proceeds in the region because of increased flow stress, and then deformation progresses in the other region.(c)Uniform deformation proceeds again after small necking disappears.

正のm値を有する材料変形時のくびれ発生抑制の模式図

高温高速ブロー成形品(Al-4.5%Mg合金)の(a)正常組
織部のミクロ組織観察結果および(b)TEM 観察結果。
Observation results of normal grains in Al-4.5%
Mg alloy after high-temperature high-speed blow forming:(a)electron backscattered diffraction
(EBSD)map and(b)transmission electron microscope(TEM)image.

高温高速ブロー成形品(Al-4.5%Mg合金)の(a)正常組

高温高速ブロー成形品(Al-4.5%Mg合金)の(a)粗大粒
発生部のミクロ組織観察結果および(b)TEM観察結果。
Observation results of coarse grains in Al-4.5%
Mg alloy after high-temperature high-speed blow forming:(a)EBSD map and(b)TEM image.

高温高速ブロー成形品(Al-4.5%Mg合金)の(a)粗大粒

Al-4.5%Mg合金を高温高速ブロー成形と同等の温度・ひずみ速度条件で変形後に、高温で所定時間保持して急冷したミクロ組織。高温での保持時間(a)0 sec、(b)5 sec 、(c)10 sec 、(d)60 sec 。
Microstructures of Al-4.5%Mg alloy deformed at the temperature and strain rate equivalent to those of high-temperature high-speed blow forming, and then held at the same temperature for prescribed durations:(a) microstructure for a holding time of 0 sec,(b)5 sec,(c)10 sec and(d)60 sec.

高温で所定時間保持して急冷したミクロ組織

製品紹介

  1. ろう付性評価における可視化技術
  2. アルミニウム合金の高温成形技術
  3. 走査型電気化学顕微鏡を用いたアルミニウム合金の表面反応観察

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