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TNFD提言に基づく情報開示

TNFD(Taskforce on Nature‐related Financial Disclosures、自然関連財務 情報開示タスクフォース)の提言に基づき、企業は自然資本と生物多様性の保全に 関する取り組みや情報開示が求められています。当社グループは、事業活動において自然環境からさまざまな恩恵を受けると同時に負荷も与えていることを十分に認識し、環境負荷の低減に取り組み、当社だからこそできる自然の保全と再生・創出に貢献していきます。並行して、TNFDの枠組みに従って、ネイチャーポジティブに係る状況や取り組みについて段階的に開示してまいります。

一般要件

TNFDは、開示事項に横断的に適用すべき6つの「一般要件」 を提示しています。当社グループにおける各要件項目は以下のとおりです。

1.マテリアリティの適用

本レポートの開示に当たっては、UACJグループの財務諸表に与える影響である財務的マテリアリティと、UACJグループが自然環境に与えるインパクト・マテリアリティの双方に着目したダブルマテリアリティの考え方を適用しました。

2.開示のスコープ

UACJグループの基幹事業であるアルミニウム製品製造業について、バリューチェーン上流のボーキサイト採掘・新地金精製から、直接操業の一次合金製造と製品製造、さらに輸送や下流の製造等を含めた範囲を、自然への影響や依存の開示範囲の対象としました。

3.自然関連課題がある地域

自然関連課題は地域固有であることを鑑み、UACJグループの主要な事業拠点49箇所を選定し、立地情報に基づいて周辺地域の自然の特性、自然関連リスクの把握を行い、優先対応拠点の抽出を行いました。

4.他のサステナビリティ関連の開示との統合

本レポートでは、TNFD提言に対応する自然関連情報のみの開示を行いました。UACJグループは、TCFD提言に基づく情報開示は既に実施しており、別途ウェブサイトを掲載しています。 UACJグループではTNFD・TCFD関連の分析や開示、また他のサステナビリティ関連の推進や開示についてはサステナビリティ推進担当部門で行っており、相互に影響を勘案しています。今後は関連性等を明確にするため統合的にレポーティングすることを検討しています。

5.検討される対象期間

自然関連リスク・機会については、中長期(2030~2050年頃まで)の視点で検討しました。グローバル中核開示指標は、2025年度(2025年4月1日~2026年3月31日)を対象としました。

6.組織の自然関連課題の特定と評価における先住民族、地域社会と影響を受けるステークホルダーとのエンゲージメント

UACJグループは、企業経営において、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会など多様なステークホルダーとの価値共創が重要となっていることを考慮し、マルチステークホルダーとの適切な協働に取り組んでいます。
また、サステナビリティに関わるマテリアリティとして「人権の尊重」も特定しており、「UACJグループ人権基本方針」を定めています。自然関連課題の特定や対応策の実施においても、この「UACJグループ人権基本方針」を適用します。

ガバナンス

ネイチャーポジティブへの取り組み体制として、社長を委員長とする「環境委員会」を設置しています。当該の委員会の下部組織のひとつとして「ネイチャーポジティブWG」を組成し、WGの検討結果および活動成果を環境委員会・経営会議から取締役会へ報告し決議を得ています。

戦略

当社グループでは、TNFDにおいて推奨されるLEAPアプローチを採用しました。
LEAPアプローチはTNFDが開発した、事業における自然との接点や自然との依存関係、影響、リスク、機会など自然関連課題を評価するための統合的なアプローチで、「Locate:発見」「Evaluate:診断」「Assess:評価」「Prepare:準備」というプロセスで構成されます。
当社グループでは、LEAPアプローチに従って、自然関連課題の依存と影響、リスクと機会の分析と評価、当社グループのとるべき対応を策定しました。
LEAPアプローチは、当社のバリューチェーン全体の視点と、当社の直接操業の拠点ごとの視点の2つの側面から行うことで、当社の自然関連課題を明確にしました。

LEAPアプローチは、下記の①②の視点の2つの側面から行うことで、当社の自然関連課題を明確にし戦略と目標の設定を行いました。

①UACJグループ バリューチェーン全体の自然関連課題分析

  • UACJグループと自然の関係を俯瞰することで、自社にとっての自然関連リスク・機会とその対応の優先 順位を付けるために、グループのバリュ ーチェーン上流から下流までの依存と影響を分析しました。
  • 依存と影響の分析結果から、UACJグループにとっての自然関連リスクと機会を評価しました。

②製造拠点における自然関連課題分析と優先地域の選定

  • 自然関連課題には地域性があることをふまえ、直接操業の拠点について、国内外の拠点における拠点ごとの自然のロケーションや、自然との関係、リスクと機会を調査しました。
  • TNFDで開示が求められる優先地域の定義に照らして、当社グループが優先的に対応をすべき拠点を選定しました。

③当社グループの戦略と目標の設定

  • 当社グループの戦略と目標、さらに優先拠点についての対応と、今後のリーディングアクションを決定しました。

当社グループ LEAPアプローチ概観

リープ(LEAP)アプローチは、事業と自然環境の関係を4つのステップで分析する手法です。バリューチェーンや拠点における自然との接点を発見(Locate)、依存と影響を診断(Evaluate)、リスクと機会を評価(Assess)した上で、対応策や目標を準備(Prepare)します。

①UACJグループ バリューチェーン全体の自然関連課題分析

UACJグループ バリューチェーンにおける自然との接点(概観図)

UACJグループのバリューチェーンと自然との接点を分析した概観図を以下に示しました。
ボーキサイト採掘から回収・リサイクルに至る、各段階におけるGHG排出、大気汚染あるいは水質汚染等の自然に与える影響、および土地や水の使用といった自然への依存についてまとめました。

UACJグループのバリューチェーン(採掘からリサイクルまで)全体における自然との接点を整理した概観図です。各工程におけるGHG排出、水・土地の使用および環境汚染など、事業活動が自然に与える影響や、自然への依存を網羅的に分析しています。

UACJグループにおける自然関連リスク、機会

UACJグループのバリューチェーン全体における自然関連の依存・影響の分析結果を踏まえ、UACJグループにおける自然関連リスク、機会を検討しました。その結果については以下のとおりです。
リスク・機会の検討にあたっては、TNFDで提示されているリスクカテゴリに沿って実施しました。またTNFDにおいて推奨されるシナリオ分析については、今後分析と開示を検討してまいります。

UACJグループにおける自然関連【リスク】

リスクカテゴリ 自然関連リスク 財務的影響の内容
物理的
リスク
急性・慢性リスク サプライヤー(ボーキサイト発掘会社、アルミナ精錬会社)の拠点における、水資源の枯渇 サプライチェーンの分断による生産停止、調達コストの増大
サプライヤー(ボーキサイト発掘会社、アルミナ精錬会社)の拠点における、水質汚染や赤泥等の廃棄物の漏洩
サプライヤーの拠点における自然災害の増加
自社事業所周辺における、水資源の枯渇 操業停止
対応コストの増加
自然災害(洪水・土砂崩れ)による自社事業所の被災
移行
リスク
政策 ボーキサイト鉱山開発や生態系復元に関する規制の強化 生態系保全・復元コストの増大による調達コストの増加
森林関連の規制強化 梱包材の調達コストの増大
市場 GHGのみならず、水や土地フットプリントの低いアルミニウムへの選好 環境負荷の高いアルミニウム製品の購入回避
評判 森林破壊の駆動要因としてのボーキサイトへの批判や購入回避の増加
生物多様性・自然に関する取組が消極的であるとみなされた場合の、企業イメージやESGスコアの低下 企業イメージ、ESGスコア低下による自社製品の購入回避
訴訟 サプライヤー及び自社拠点における汚染物質漏洩や環境事故の発生 環境事故に対する賠償責任の発生
サプライチェーンの分断による生産停止、調達コストの増大

UACJグループにおける自然関連【機会】

機会カテゴリー UACJグループに影響があると考えられる機会 財務的影響
企業の
パフォーマンス
市場 アルミニウムのリサイクル性の高さに対する市場の選好 製品の売上増加
資源効率 再生材や再生可能エネルギーへのシフト 製造過程における省エネルギー化・循環利用の推進による製造コストの削減
財務 生物多様性・自然関連の取り組み強化による、資金調達の選択肢の増加 資源調達の選択肢の増加
製品と
サービス
GHG削減、ネイチャーポジティブに貢献する製品・サービスの開発 新たな市場による製品の売上増加
評判資本 生物多様性・自然関連の取り組み強化によるレピュテーションやESG評価の向上 レピュテーション向上による製品の売上増加
アルミニウムのリサイクル性に注目した、環境負荷の低い素材としてのイメージの定着
自社事業所および周辺の生態系や生物多様性の保全を通した、地域社会や地元自治体との関係性強化
持続可能性
パフォーマンス
自然資源の持続可能な利用 再生材の利用促進による、新たな土地改変等の環境負荷の削減 —
生態系の
保護、復元、再生
自社事業所の立地する流域における森林保全、水涵養への貢献 —

②製造拠点における自然関連課題分析と優先地域の選定

直接操業についての自然関連課題の地域別分析

UACJグループの製造拠点が立地する地域における自然環境の特徴や自然関連リスクを把握することで、地域固有の自然関連課題を特定・把握するため、主要な製造拠点49箇所について立地情報を用いた分析を実施しました。

分析対象としたUACJグループの主な49拠点

no. 会社名 事業所名 国名 地域名
1 Tri-Arrows Aluminum Inc./UACJ North America, Inc. 米国 ケンタッキー州
2 Logan Aluminum Inc. 米国 ケンタッキー州
3 UACJ Metal Components North America, Inc. 米国 ペンシルバニア州
4 UACJ Trading&Processing America, Inc. 米国 ミシガン州
5 UACJ Automotive Whitehall Industries, Inc. Head Office Michigan District Plant 米国 ミシガン州
6 UACJ Automotive Whitehall Industries Paducah Plant 米国 ケンタッキー州
7 UACJ Automotive Whitehall Industries Flagstaff Plant 米国 アリゾナ州
8 UACJ Automotive Whitehall Industries Sanmiguel Plant メキシコ グアナファト州
9 UACJ Metal Components Central Mexico, S.A. de C.V. メキシコ グアナファト州
10 UACJ Metal Components Mexico, S.A. de C.V. メキシコ バハ・カリフォルニア州
11 UACJ Extrusion Czech s.r.o. チェコ 中央ボヘミア州
12 UACJ ELVAL HEAT EXCHANGER MATERIALS GmbH ドイツ デュッセルドルフ
13 Boyne Smelters Ltd. オーストラリア ボイン島
14 UACJ (Thailand) Co., Ltd. タイ ラヨン県
15 UACJ Extrusion (Thailand) Co., Ltd. タイ プラチンプリ県
16 UACJ Metal Components (Thailand) Co., Ltd. タイ パトゥムターニー県
17 乳源東陽光優艾希杰精箔有限公司 中国 広東省
18 戴卡優艾希傑渤鋁(天津)精密鋁業有限公司 中国 天津市
19 戴卡優艾希杰渤鋁汽車零部件有限公司 中国 秦皇島市
20 戴卡優艾希杰渤鋁(滁州)汽車零部件有限公司 中国 滁州市
21 UPIA Co., Ltd. 韓国 韓国・牙山市
22 PT. YANJIN INDONESIA インドネシア ブカシ県
23 UACJ Foundry & Forging (Vietnam) Co.,Ltd. ベトナム ホーチミン市
24 UACJ Foil Malaysia Sdn. Bhd. マレーシア ジョホール州
25 深谷製造所 日本 埼玉県
26 名古屋製造所・製作所 日本 愛知県
27 小山製作所 日本 栃木県
28 株式会社UACJ押出加工群馬 日本 群馬県
29 日光製造所跡 日本 栃木県
30 福井製造所 日本 福井県
31 株式会社UACJ押出加工安城 日本 愛知県
32 株式会社UACJ押出加工滋賀 日本 滋賀県
33 軽金属押出開発株式会社 日本 三重県
34 日本クーラー株式会社 日本 兵庫県
35 株式会社UACJ金属加工 広島工場 日本 広島県
36 株式会社UACJ金属加工 滋賀工場 日本 滋賀県
37 株式会社UACJ金属加工 郡山工場 日本 福島県
38 株式会社UACJ金属加工 成田工場 日本 千葉県
39 株式会社UACJ金属加工 仙台工場 日本 宮城県
40 株式会社UACJ金属加工 恵那工場 日本 岐阜県
41 株式会社日金 埼玉工場 日本 埼玉県
42 株式会社UACJ製箔 野木製造所 日本 栃木県
43 株式会社UACJ製箔 滋賀製造所 日本 滋賀県
44 鋳鍛製作所 日本 栃木県
45 株式会社UACJアルミセンター 奈良工場 日本 奈良県
46 鎌倉産業株式会社 日本 静岡県
47 株式会社UACJアルミセンター 宇都宮カラーアルミ工場 日本 栃木県
48 株式会社UACJ Marketing & Processing 日本 愛知県
49 株式会社UACJアルミセンター 滋賀工場 日本 滋賀県

分析手法

1.地図情報の把握

拠点周辺地域における基礎情報として、以下の情報を取りまとめました。

対象拠点 データ 出典
海外拠点 ベースマップ(広域・詳細) Esri社ベースマップ
衛星画像(広域・詳細) MAXAR衛星データ
国内拠点 ベースマップ(広域・詳細) 国土地理院
衛星画像(広域・詳細) MAXAR衛星データ
流域内の位置 国土数値情報・流域界・非集水域
土地利用図 JAXA高解像度土地利用土地被覆図ver.23.12
植生自然度 環境省植生図
保護区との位置関係(広域・詳細) 国土数値情報・国有林野、自然公園地域、自然保全地域、鳥獣保護区
期待される雨水浸透機能 環境省EADAS 地形・地質等から期待される雨水浸透機能
浸水想定区域 国土数値情報・洪水浸水想定区域データ(河川単位)、津波浸水想定データ

対象の49拠点について、周辺の自然環境に関する空間情報・文献情報を用いて、地域の立地条件を確認。その特徴を把握して固有の自然との関わりを推察し、取組の方向性や取組により期待される効果量を把握し、対応優先度の高い拠点を抽出。

分析イメージ

事業所の位置、生態系のタイプおよび保全上の重要性等の空間情報と文献情報にもとづき、取り組みにより期待される効果を把握しました。

各拠点の分析例

事業所周辺の土地利用状況、植生、および流域の情報について調査しました。
  • こちらの主な分析結果については後述します
2.水・生物多様性関連リスクの把握

WWF Water Risk Filter Suite v2.0 (WWF Water Risk Filter、WWF Biodiversity Risk Filter) を用いて、拠点別の水・生物多様性関連リスクを評価した。

WWF Water Risk Filter (2024年)による水リスクの分析

WWFが提供する、企業や金融機関が、生物多様性と水のリスク評価を行うことができるオンラインプラットフォームである【 Water Risk Filter】を用い、拠点の流域別水リスクの概観評価を行いました。

WWF water risk filterが対象とする水のリスクには、物理リスク・規制リスク・評判リスクがあります。

参考:流域の物理リスク総合評価のマッピング

  • 出展:WWF
物理リスク

河川流域の自然的および人為的要因の両方の状態を表す。リスクカテゴリーは、
1) 水の利用可能性、2) 干ばつ、3) 洪水、4) 水質、5) 生態系サービスの状況

規制リスク

良好なガバナンスの概念、企業の規制環境に係わりがある。リスクカテゴリーは、
6) 環境整備(主に法律と政策に関係)、7) 制度とガバナンス 8) 管理手段 9) 水衛生インフラ

参考:流域の評判リスク総合評価のマッピング

  • 出展:WWF
風評評判リスク

風評評判リスクの多くは操業上のリスクですが、流域固有の前提条件によって風評評判リスクが顕在化する可能性が高まります。風評評判リスクは、企業が水に関して持続可能かつ責任ある事業活動を行っているかどうかについてのステークホルダーや地域社会の認識を表します。リスクカテゴリーは、
10) 環境要因、11) 社会経済的要因、12) その他の風評評判要因

当社グループ各拠点の流域についてそれぞれのリスクについてのスコアを評価したところ、物理リスクと評判リスクについてスコアの高い拠点が判別されました。スコアの高かった拠点について下記(1)(2)に分析内容を開示します。

(1)WWF Water Risk Filterで、流域の物理リスクの総合評価が「高い」に分類された4拠点と、そのリスクタイプ別詳細
メキシコ・タイ・中国の海外4拠点を対象としています。全体的に水ストレスや干ばつなど「水利用可能性(渇水リスク)」のスコアが非常に高いほか、プラスチック廃棄物や毒性など「水質」面でも高いリスクが顕在化しているのが特徴です。
流域名 拠点名 水リスク(物理リスク)の内容​
ティファナ川
​流域​
UACJ Metal
Components
Mexico, S.A. de C.V.
水ストレスが非常に高いため水資源の安定性にリスクがあり、また干ばつのリスクがある。農薬や化学物質などの影響による水質汚染悪化や、湿地や河川面積の減少により生態系サービスへ影響を与える可能性も高い状況。事業活動により水資源や環境への負荷を与えないよう留意する必要がある。​
タイランド湾​​ UACJ
Extrusion(Thailand)
水ストレスが高く、干ばつや洪水のリスクも高い。また水質悪化が懸念されている。過剰利用や排水により、更に水資源や水質に負荷を与える状況が生じないよう留意が必要。​​
チャオプラヤ川
流域​
UACJ Metal
Components
(Thailand)
干ばつや洪水のリスクが高く、化学物質等による水質悪化が懸念されている。また河川の分断化に関するスコアが悪く、生態系が劣化状態にある。事業活動による更なる生態系劣化を避ける取り組みが求められる。​
黄海と東シナ海​​ 戴卡優艾希傑渤鋁
(天津)​
精密鋁業有限公司​​​
水ストレスが高いなかでも特に地下水に係るストレスが高い。また砂漠化や洪水のリスクも高く、化学物質等による水質悪化が多くの項目で懸念されている。さらに湿地の劣化や河川の分断に関するスコアも悪い。操業時は水資源の過剰利用や排水により、更に水資源や水質に負荷を与える状況が生じないよう留意が必要。​​
(2)WWF Water Risk Filterにおいて流域の評判リスクについては分析対象の全ての拠点について「とても高い」と分類された項目があるため、全ての拠点のリスクタイプ別詳細を掲載
多くの海外拠点において「メディアの監視」が「VH(非常に高い)」と評価されており、環境問題等への報道リスクが高い状態です。また、一部地域では水紛争や人権に関する社会経済的要因のリスクも認められます。
地域​ 水リスク(評判リスク)の内容​
北米​ 米国においては淡水生物の多様性、メキシコにおいては淡水固有種の重要性による評判リスクが高い。
米国・メキシコいずれにおいても過去の水に係る過去に企業と流域関係者でのコンフリクトが生じており、メディアの監視リスクも高い。​
欧州​ 淡水固有種の重要性に起因する評判リスクが全般的に高く、またドイツにおいてはメディアの監視リスクの重要性が高い。​​
すべての国内拠点において「淡水生物多様性の豊かさ」が「VH」、「淡水固有種」が「H」となり、生態系保全の観点で敏感な環境に立地しています「メディアの監視」も総じて高く、適切な環境配慮と情報開示が求められます。
地域​ 水リスク(評判リスク)の内容​
オセアニア​​ 淡水生物の固有種の重要性に起因する評判リスクおよびメディアの監視リスクの重要性が高い​。
アジア​ 東南アジアにおいては淡水生物多様性の豊かさによるリスクが高く、中国においては人権の自由度に起因する社会経済的評判リスクや、メディアによる監視リスクが全般的に高い。​
日本は淡水生物の固有種や多様性が高く、ラムサール条約の湿地が多数であり、同時に国際的に関心の高い地域である等から、評判リスクが全般的に高い。​​​
3.レッドリスト掲載種・保護区の近接性の把握

Integrated Biodiversity Assessment Tool(IBAT)を用いて以下の情報を拠点ごとに分析した。

  • 50Km圏内の保護区の数
  • レッドリスト掲載種数
  • 絶滅危惧種数
  • 50Km圏内の生物多様性需要地域(Key Biodiversity Areas)の数
その他の指標による、拠点の立地する地域別分析結果 各分析結果についてまとめた結果は以下のようになりました。
地域​ リスクの特徴 IBAT WWF
水リスクフィルター
WWF
生物多様性リスクフィルター
地図情報
北米 メキシコは水質に起因する水リスクが高い。
米国、メキシコともに、コンフリクト、メディアの監視といった評判リスクが高い。
近隣に生息する絶滅危惧種数や生物多様性の保全上重要な地域(KBAs)との近接性が他地域と比べて少ない。 前述の水リスクフィルター
各分析を参照
物理リスクとしては、陸地・淡水・海域の利用変化による生物多様性への影響が大きい。また森林の喪失や汚染に起因するリスクも高い。 多くの拠点が田園地帯や市街地の周縁部の工場地帯に立地している。
評判リスクとしては、メディアの監視によるリスクが高い
欧州 ドイツは非常に多くの保護区が分布しており、保護区への影響による評判リスクが高い。(将来的には 規制リスクも想定される。)
いずれの拠点も、汚染に起因するリスクが高い。
近接する保護区やKBAsの数が多い。
特に、ドイツは近隣に非常に多くの保護区が分布する。
物理リスクとしては、ドイツは陸地・淡水・海域の利用変化や汚染に起因するリスクが高い。チェコは森林の喪失、汚染による影響が高い。 ドイツの拠点が河川の蛇行部分の氾濫原に立地している。
評判リスクとしては、チェコは他国と比べてリスクが低く、ドイツはメディアの監視や保護区の分布の影響によるリスクが高い。 チェコの拠点は田園地帯に立地している。
オセアニア 絶滅危惧種が多く生息する地域であり、メディアによる監視に起因する評判リスクが高い。 近隣に生息する絶滅危惧種数が多い。 物理リスクとしては、樹林面積の減少に伴うリスクが高い。 オーストラリア ブリスベン市の拠点は赤泥ダムが隣接する。
評判リスクとしては、メディアの監視によるリスクに加えて、保護区への影響によるリスクが高い。
アジア タイや中国の拠点では水供給や自然災害に起因する物理リスクが高い。
東南アジアは非常に多くの絶滅危惧種が生息する地域であり、また日本は生物多様性の重要性が高く注目度も高いため、評判リスクが高い。
インドネシア、ベトナム、マレーシアは、近隣に生息する絶滅危惧種数が他地域と比べて非常に多い。
日本は、近接する保護区の数が欧州に次いで多く、KBAsも多い。
物理リスクとしては、タイのチャオプラヤ川流域と、中国の黄海と東シナ海地域における水供給に起因するリスクと、ベトナム・マレーシアの森林の喪失によるリスク、また日本を含むアジア全体に汚染に伴うリスクが高い。 多くの拠点が工場集積地帯に立地する。
タイ・中国・ベトナム・マレーシアの一部の拠点は河川に隣接する。
評判リスクとしては、メディアの監視によるリスクに加えて、タイや日本は近隣の保護区への影響によるリスクが高く、中国では人権に関するリスクが高い。

直接操業拠点の存在する地域ごとの自然関連課題調査の結果、立地する地域ごとの自然の特徴と水リスクや生物多様性リスクを把握することができました。
ただしこれらは地域ごとの概要の把握にとどまるため、今後はこの結果をもとに各拠点ごとの調査と対応の策定を行い、リスクへの対応と機会の創出を目指し、当社グループの戦略を策定していきます。

③当社グループの戦略と目標の設定

優先対応拠点の選定

TNFDの提言においては、企業が優先的に対応すべき優先地域の選定と開示を求めています。
UACJグループでは、国内の直接操業の拠点について、拠点ごとの分析結果をもとに当社が具体的な活動に取り組む優先拠点を選定しました。TNFDの優先地域は「マテリアルな地域」と「要注意地域」と定義されていますが、当社グループではまずTNFDにおける「マテリアルな地域」に対応して、「地域の生態系サービスの依存に起因するリスクが想定される地域」を選定の対象としました。また「要注意地域」に対応して「周辺に豊かな自然が多く存在し、生物多様性への影響が大きい地域」を選定の対象としました。選定にあたっては、バリューチェーン全体の評価結果および、直接操業拠点の地域別の分析結果から製造所周辺の自然環境情報等を考慮しました。

優先対応拠点の選定

タイプ​ 選定した拠点
  1. 地域の生態系サービスへの依存に起因するリスクが想定される拠点
  • 深谷製造所
  • 名古屋製造所・製作所
  • 株式会社UACJ押出加工小山
  1. 周辺に豊かな生態系が存在すると考えれる拠点
  • 日光製造所跡
  • 福井製造所
  • 株式会社UACJ金属加工 成田工場

アクションプラン

ネイチャーポジティブ実現に向けたUACJグループのアクションUACJグループはこれまでも、生物多様性に関する課題の解決に向けて活動を行ってきました。2023年度にはサステナビリティに関わるマテリアリティとして「自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)」を追加し、ネイチャーポジティブ実現のロードマップを設定することでさらに具体的な施策に取り組んでまいりました。ロードマップにはTNFD提言に従った情報開示に向けての準備を設定し、これに向けた自然関連課題の分析と調査を行ってきました。
今年度はTNFD提言に沿った自然関連課題の分析結果を踏まえ、UACJグループとしてネイチャーポジティブ実現に向けて具体的に取り組むべき施策を、アクションプランとしてとりまとめました。

リスクとインパクトの管理

当社グループにおいては、自然関連課題の管理は、環境委員会の下部組織であるネイチャーポジティブワーキンググループが中心となり、関係する事業部門等との連携により対応を進めています。
重大な財務影響をもたらしうる自然関連リスクについては、社長執行役員の諮問機関である経営会議において審議・報告されることでリスクマネジメント推進における意思決定を行うとともにPDCAを確認します。

指標と目標

グローバル中核開示指標

グローバル中核開示指標に対応するUACJグループの2025年度実績値は下記の通りです。なお、2025年度実績値の集計範囲は、UACJ(名古屋、福井、深谷)、UACJアルミセンター(宇都宮カラーアルミ)、UACJ押出加工名古屋(名古屋、安城)、UACJ押出加工小山、UACJ押出加工群馬、UACJ押出加工滋賀、UACJ製箔(伊勢崎、滋賀、野木)、UACJ鋳鍛の計13事業所としました。

グローバル中核開示指標 (2025年実績値)

測定指標番号​ 自然の変化の要因​ 指標​ 測定指標​ 2025年度実績値
C2.1 汚染/汚染除去 廃水排出 排水先別排水量 淡水の地表水 6,656 千t
海水 273 千t
第三者(下水道等) 1,505 千t
排水の水質(対象製造所:UACJ(名古屋、福井、深谷)) pH、BOD、n-H、SS 基準値以下
C2.2 廃棄物の発生と処理 廃棄物発生量 有害廃棄物 直接埋立処分量 2,985 t
産業廃棄物 5,833 t
再資源化物 949 t
有害以外の廃棄物 直接埋立処分量 4,025 t
産業廃棄物 3,285 t
再資源化物 16,268 t
C2.4 GHG以外の大気汚染物質総量 大気汚染物質排出量 SOx 64 t
NOx 502 t
C3.1 資源利用/資源補充 水不足の地域からの取水量と消費量 取水源別取水量 地下水 2,877 千t
第三者(工業用水など) 7,367 千t

マテリアリティの2030年目標

UACJグループのサステナビリティに関わるマテリアリティの1つである「自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)」の2030年度目標としては、取水量の削減率25%以上を目指します。
今後、その他の活動の目標値については検討を進め、前述したアクションプランの着実な進捗の管理・開示をしていく計画です。