気候変動への対応

  • ツイートする
  • facebookでシェアする
音声で読み上げる

気候変動対策に対する考え方

気候変動への対応は、社会全体で取り組むべき喫緊の課題となっています。この責務を果たすために、当社ではGHG排出量の削減を含めた「カーボンニュートラルの実現」を重要課題の一つと位置づけ、事業活動を通じて排出するGHGの削減だけではなく、アルミニウムの利活用の機会を拡大していくことなどによって、社会全体におけるGHG排出量の削減、持続可能な社会形成に貢献していきます。

こうした取り組みの実効性を確保するために、当社は2050年度にScope1・2でカーボンニュートラル(CN)実現を目標とするロードマップを策定し、取り組みを進めています。その中間地点となる2030年度には、CO2排出原単位を2019年度比30%削減することを目標に掲げ、最終製品に近い製品の製造拠点を中心に、国内17拠点で100%再生可能エネルギー由来の電力を購入し、Scope2のCO2排出量をゼロとする施策(再エネ電力100%工場)などを展開しています。また、Scope3においても、リサイクルの推進等で2030年度には2019年度比30%削減(Category1・原単位)する目標を掲げ、取り組みを進めています。

Scope1・2のCO2排出原単位削減率の推移

Scope3のGHG排出原単位削減率の推移

気候変動への対応のロードマップ

GXリーグ参画による気候変動対策の推進

当社は、2024年4月に、カーボンニュートラルの実現を目指すさまざまな企業や組織で構成される「GXリーグ」に参画しました。GXリーグは、日本政府が定めた「2030年度において温室効果ガス(GHG)排出量を46%削減(2013年度比)する」という目標の達成に向けて、産学官で協働していく枠組みです。当社は、日本のアルミニウム業界を代表するリーディングカンパニーとして、業界における脱炭素の取り組みを牽引していきます。また、日本政府とのコミュニケーションを強化し、業界を超えたルールメイキングの場に参画するとともに、気候変動対策の推進によるビジネス機会の拡大を図っていきます。

当社のGXリーグにおけるCO2等のGHG排出量削減目標(Scope1・2合計)は、2014年度から2016年度までの3カ年平均を基準として、2024年度と2025年度の平均で19%削減、2030年度で30%削減する計画です。この内容はGXリーグ事務局の承認を受けています。

GXリーグでのScope1・2のCO2削減目標

TCFD提言に基づく情報開示

ガバナンス

当社は、「サステナビリティ基本方針」のなかで、気候変動対策を含むサステナビリティ活動を推進するための基本的な考え方とアプローチを規定しています。

気候変動対策への取り組み体制としては、社長を委員長とする「環境委員会」(旧「環境委員会」と「気候変動対策推進委員会」を2024年度より統合)を設置しています。当委員会の下部組織である「管制機構」「カーボンニュートラル対応ワーキンググループ(WG)」「サーキュラーエコノミーWG」「リサイクル推進WG」「原料調達WG」「グリーンテクノロジープロジェクト」など9つのWG(→P.64参照)が連携して取り組みを進めています。WGの検討結果や活動成果は、ガバナンス強化の一環として、必要に応じて環境委員会から取締役会へ報告し決議を得ています。

戦略

当社は、2021年度にIEA※1やIPCC※2等の将来予測を参考にシナリオ分析を行い、1.5℃シナリオにおいて、今後の対応策の実施と新たな機会の獲得を合わせることで正のインパクトの方が大きくなることを確認しています。2021年度から「気候変動への対応」をマテリアリティの一つとしてきた当社は、シナリオ分析結果を踏まえ、2023年度に再整理した際にも、改めて「気候変動への対応」をマテリアリティの一つとし、GHG排出量の削減に取り組んでいます。

また、当社は2024年度からスタートさせた第4次中期経営計画において、リサイクルの推進を重要な戦略と位置づけています。アルミニウムをリサイクルし、その利活用の場を拡げ、同一製品へのアルミニウム循環(水平リサイクル)を促進することは、GHG排出量の削減、新地金の原料となるボーキサイトの採掘抑制となり、その際に生じるGHG排出量の削減にもなります。こうしたサーキュラーエコノミーの構築、ネイチャーポジティブへの貢献もマテリアリティに特定しており、重要な経営施策として気候変動対策に取り組んでいます。

  • ※1 IEA(国際エネルギー機関)
  • ※2 IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)

シナリオ分析対象

売上高グラフ

注: 2020年3月期のデータで記載

矢印

対象セクター(製品例)

セクター1 セクター2 製品例
アルミ圧延品事業 板事業 飲料製品(ボディ材、クロージャ―材)
自動車(パネル材、熱交換器材)
押出事業 自動車(フレーム、熱交換器材・配管材)、IT製品
箔事業 医薬品、食品包装、電池
鋳鍛事業 自動車(コンプレッサホイール、カーエアコン部品)
加工品・関連事業 自動車部品事業 自動車(バンパー、サンルーフガイド)
加工品事業 建材、産業機器

注: 2020年3月期のデータで記載

検討リスク項目

移行リスク
  • 政策:炭素価格、その他規制(リサイクル規制、水規制 等)
  • 市場:エネルギー価格の変化、原材料の高騰
  • 評判:顧客行動の変化、投資家の評判変化
物理的リスク
  • 慢性:平均気温の上昇
  • 急性:異常気象の激甚化

リスク重要度評価(リスクと機会)を行った上で、1.5℃と4℃の2つのシナリオについて分析しています。

「選択シナリオ」と「将来社会像イメージ」および「組織課題への対応策(PDFファイルを開きます1.2MB)

今後はシナリオ分析の全社展開や成熟度の向上に努め、当社ウェブサイトや統合報告書などの媒体を通じて開示・報告し、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションに努めていきます。

今後のアクションとアクションの詳細

シナリオ分析の全社展開
  • 今回のシナリオ分析では対象を板事業と国内およびタイ事業場に絞った。今回の手法を展開し、グループ全体でのシナリオ分析を実施する
  • 本プロジェクトチームをコアとしてタスクフォースやワーキンググループ等を設置して、グループ全体、各業務層に展開する。
モニタリング・実行体制
  • 今回は2パターンのシナリオを設定した。気候変動の不確実性は高く、どういった将来が予想されるかを定期的にウォッチし、影響評価を行い、戦略を見直す。
  • 気候変動リスクへの取り組みは今回はPJとしてチーム組成したが、一時的な取組としないためにも、正式な組織ロールとして組み込む。
成熟度の向上
  • 今回実施した取り組みはあくまでシナリオ分析の「レベル1」のため、今後レベル2、3に向け、成熟度を段階的に高める。

リスク管理

当社は「UACJ Report 2023」で日本やタイなどに炭素税が導入された場合の影響額を試算し、公表しました。しかし、その後、為替などの試算前提に大きな変動が生じたこと、また、2026年から欧州でCBAM※3が本格適用され、北米や日本においてもカーボンプライシング導入に向けての議論が進んでいることを踏まえ、改めて試算しました。その結果、Scope1・2において当社が目標とする「2030年度にCO2排出量を2019年度比で30%削減、2050年度にカーボンニュートラルを実現する」場合と、対応しない場合との比較において、GHG削減効果金額は2030年度で73億円、2050年度に790億円との試算額が示されました。

  • ※3 炭素国境調整メカニズム

主なリスク/機会の評価と対応策

  炭素価格
(炭素税・国境炭素調整)
各国の炭素排出目標/ 政策
(排出量取引、カーボン・フット・プリントの報告義務化等)
指標 収益支出 収益支出
事業インパクト リスク
  • 輸入原料・資材の調達コスト増加
  • 電力コスト増
  • 排出権買取費用による原料調達・製造コスト増加
  • アルミニウムスクラップ溶解炉や燃料転換、省エネ等の設備更新・導入等の費用が増加
  • カーボン・フット・プリントの記録・報告義務化にともなう、製造管理コストが増加
機会
  • GHG排出量抑制が不十分な国・地域による製品の競争力低下にともなう当社製品販売機会と収益の増加
  • 新地金の調達を減らすことにより炭素税などのコスト軽減が可能
  • 規制強化により、他素材からの切り替え需要が増加
  • アルミニウムの軽量性や高熱伝導性、リサイクル率の高さを活かした収益増加の機会
評価
対応策 区分 適応
リスク対応策案
  • 長期的なCO2排出量削減目標の設定
  • 長期的なエネルギー使用量削減目標の設定
  • インターナルカーボンプライシングの導入
機会の取り込み施策案
  • 長期的なCO2排出量削減施策の実施
  • 森林等のCO2の吸収とクレジット制度の活用
  • 削減貢献量の評価方法構築
  • 脱炭素に向けた、官民連携・国際協力による省エネ技術の移転

炭素税の財務影響額試算

指標と目標

当社は、2022年6月に公表した「気候変動対策に対する考え方」において、「2050年にScope1・2におけるカーボンニュートラルの実現に挑戦すること、そしてその過程である2030年度にCO2排出量を30%削減※4することを目指す」という目標を掲げました。

Scope3については、2023年12月、リサイクルの拡大等により2030年度にGHG排出量を30%削減※5することを目指し、2050年にはサプライチェーンのさまざまなパートナーと協業し、リサイクルの最大化、かつ、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減を行うことによって、GHG排出量を最小化するという目標を掲げました。

2030年度の目標達成、2050年におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、CO2に代表されるGHG排出量削減の取り組みを推進していきます。

  • ※4 2019年度比・原単位
  • ※5 2019年度比・原単位、Category1

CDPへの自発的参加

国際的の気候変動対策イニシアチブであるCDP「カーボン ディスクロージャ プロジェクト」への自発的参加により、温室効果ガスのマネジメント水準の客観的評価を得ながら、活動のレベルアップを図ります。一例として、GHGプロトコルの定義に従い、温室効果ガスをスコープ1(社内での燃料の燃焼による直接排出)、スコープ2(社内で使用する電力を発電する際の間接排出)、スコープ3(サプライチェーン全体での上流および下流における排出)に分けて、算定し、本ウェブサイト内で公表しています。