気候変動への対応
気候変動対策に対する考え方
UACJグループは、総合アルミニウムメーカーとして、環境基本方針の行動指針に基づき、気候変動対策および脱炭素社会への移行に積極的に取り組むことが重要な社会的責務であるとの認識をもっています。
そのうえで、事業活動により排出される温室効果ガス(GHG)が、地球の気候変動に影響を及ぼしているという科学的知見に基づき、下記の「行動指針」に則った取り組みを進めています。これにより、今世紀末時点での世界の平均気温の上昇幅を産業革命前と比べ2℃未満、できれば1.5℃未満に抑えるというパリ協定の目標達成への貢献を図ります。
2021年9月には、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織「TCFDコンソーシアム」に加入しました。気候変動が当社グループに及ぼすリスクと機会を、当社の事業に即した独自のシナリオに基づく評価・分析を通じて、気候変動への対応をより一層深化させていきます。


行動指針
- 事業活動によるCO2等のGHG排出量の削減活動を継続・拡大・深化して、 2050年Scope1・2におけるカーボンニュートラル(CN)への挑戦、その過程である2030年度は30%の削減※を目指します。
- Scope3においてはサプライチェーンの様々なパートナーとの協業に取り組み、リサイクル最大化、かつ、サプライチェーン全体でのGHG排出最小化を目指します。
- 従前より取り組んできた省エネルギーをますます加速するとともに、GHG排出量のより少ない燃料に転換、さらに、再生可能エネルギーの使用を推進します。
- アルミニウムはLCAで見た時の軽量化やその何度でもリサイクルできるという特性で、GHG排出削減に貢献できます。環境配慮型製品ブランドである「UACJ SMART」をはじめとして、GHG削減に貢献する製品・サービスの提供に努めます。
- GHG削減に貢献する技術開発を推進します。
- GHG削減に関するイニシアチブ活動に自主的、積極的に取組むとともに、積極的な情報開示に努めます。
- ※2019年度比。第6次エネルギー基本計画(経産省2021年)を用いて算出。
TCFD提言に基づく情報開示
ガバナンス
UACJは、「UACJサステナビリティ基本方針」の中で、気候変動対策を含むサステナビリティ活動を推進するための基本的な考え方とアプローチ方法を規定しています。
また、気候変動対策への取り組み体制として、2021年4月1日付で社長を委員長とする「気候変動対策推進委員会」を設置しました。当委員会のもとに、「カーボンニュートラル対応」「リサイクル推進」「アルミ化推進」「原料調達」の各ワーキング・グループ(以下、WG)を設置しています。WGの検討結果や活動成果は、必要に応じて気候変動対策推進委員会から経営会議ないしは取締役会へ報告し、決議を得ることとしており、経営層が直接ガバナンスを行っています。
戦略
気候変動対策のシナリオ分析では、当社の事業を代表する分野であること、またポートフォリオ上でも重要度が高いことを考慮して「アルミ圧延品事業」の「板事業」を対象とし、原材料調達から廃棄・リサイクルに至るすべてのバリューチェーン上のリスクと機会を検討しました。
将来における気候変動のシナリオは、TCFDが2℃以下を含む複数の温度帯シナリオの選択を示唆していることを受けて、IEA※1やIPCC※2等の将来予測を参考としました4℃(2.6℃~4℃)シナリオおよび1.5℃シナリオの2つを分析しました。
4℃シナリオでは、さらなる対応策の実施や新たな機会獲得を併せても負のインパクトが発生する結果となりました。一方、1.5℃シナリオでは、今後の対応策実施と新たな機会獲得と併せた場合に正のインパクト大きくなる結果となりました。ただし、このシナリオでは、再生可能エネルギーの利用拡大など脱炭素化の加速が欠かせないため、当社では、UATHに世界最大級の屋根置き太陽光発電を導入するとともに、国内の熱処理炉の燃料をLPGや重油からLNGに転換するなど、脱炭素化に向けた施策を展開していきます。
- ※1:IEA(国際エネルギー機関)
- ※2:IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)
UACJ事業ポートフォリオ(売上高)
対象セクター(製品例)
セクター1 | セクター2 | 製品例 |
---|---|---|
アルミ圧延品事業 | 板事業 | 飲料製品(ボディ材、クロージャ―材) 自動車(パネル材、熱交換器材) |
押出事業 | 自動車(フレーム、熱交換器材・配管材)、IT製品 | |
箔事業 | 医薬品、食品包装、電池 | |
鋳鍛事業 | 自動車(コンプレッサホイール、カーエアコン部品) | |
加工品・関連事業 | 自動車部品事業 | 自動車(バンパー、サンルーフガイド) |
加工品事業 | 建材、産業機器 |
検討リスク項目
移行リスク
- 政策:炭素価格、その他規制(リサイクル規制、水規制 等)
- 市場:エネルギー価格の変化、原材料の高騰
- 評判:顧客行動の変化、投資家の評判変化
物理的リスク
- 慢性:平均気温の上昇
- 急性:異常気象の激甚化
リスク重要度評価(リスクと機会)を行った上で、1.5℃と4℃の2つのシナリオについて分析しています。
「選択シナリオ」と「将来社会像イメージ」および「組織課題への対応策(1.2MB)
今後はシナリオ分析の全社展開や成熟度の向上に努め、当社ウェブサイトや統合報告書などの媒体を通じて開示・報告し、ステークホルダーの皆様とのコミュニケーションに努めていきます。
今後のアクションとアクションの詳細
シナリオ分析の全社展開
- 今回のシナリオ分析では対象を板事業と国内およびタイ拠点に絞った。今回の手法を展開し、グループ全体でのシナリオ分析を実施する
- 本プロジェクトチームをコアとしてタスクフォースやワーキンググループ等を設置して、グループ全体、各業務層に展開する。
モニタリング・実行体制
- 今回は2パターンのシナリオを設定した。気候変動の不確実性は高く、どういった将来が予想されるかを定期的にウォッチし、影響評価を行い、戦略を見直す。
- 気候変動リスクへの取り組みは今回はPJとしてチーム組成したが、一時的な取組としないためにも、正式な組織ロールとして組み込む。
成熟度の向上
- 今回実施した取り組みはあくまでシナリオ分析の「レベル1」のため、今後レベル2、3に向け、成熟度を段階的に高める。
リスク管理
気候変動対策推進委員会事務局内に設置した「TCFD対応チーム」が、TCFDの枠組みに沿ったリスクと機会の特定、シナリオ・ロードマップ作成を担っています。気候変動への対応はグループ全体で取り組む方針であることから、TCFD対応チームには、営業、製造、法務、リスク管理、広報、サステナビリティ推進及び財務本部など、組織横断的に幅広いグループ内のメンバーが参加し、取り組みを推進しています。
想定されるUACJグループへの事業インパクト(リスクと機会)
移行リスク・機会
リスク項目 | 事業インパクト | 評価 | ||
---|---|---|---|---|
小分類 | 指標 | リスク | 機会 | |
炭素価格(炭素税・国境炭素調整) | 収益支出 |
|
|
大 |
各国の炭素排出目標/政策(排出量取引、カーボン・フットプリントの報告義務化等) | 収益支出 |
|
|
中 |
各国のリサイクル規制/政策 | 収益支出 |
|
|
大 |
エネルギーミックスの変化 | 収益支出 |
|
|
大 |
次世代技術の進展 | 支出 |
|
|
大 |
顧客の行動変化 | 収益支出 |
|
|
中 |
物理的リスク・機会
リスク項目 | 事業インパクト | 評価 | ||
---|---|---|---|---|
小分類 | 指標 | リスク | 機会 | |
平均気温の上昇 | 収益 |
|
|
中 |
異常気象の激甚化(サイクロン、洪水) | 収益支出 |
|
|
大 |
指標と目標
UACJは、2022年6月に公表した「気候変動対策に対する考え方」において、「2050年にScope1・2におけるカーボンニュートラル(CN)の実現に挑戦すること、そしてその過程である2030年度に30%の削減※を目指す」ことを目標に掲げました。
Scope3については、サプライチェーンにおけるさまざまなパートナーとの協業に取り組み、リサイクル最大化、かつ、サプライチェーン全体でのGHG排出最小化を目指すという目標を設定しました。
2030年度の目標達成、2050年におけるCN実現に向けて、CO2に代表される温室効果ガスの排出削減の取り組みを推進していきます。
- ※2019年度比。第6次エネルギー基本計画(経産省2021年)を用いて算出。
CDPへの自発的参加
国際的の気候変動対策イニシアチブであるCDP「カーボン ディスクロージャ プロジェクト」への自発的参加により、温室効果ガスのマネジメント水準の客観的評価を得ながら、活動のレベルアップを図ります。一例として、GHGプロトコルの定義に従い、温室効果ガスをスコープ1(社内での燃料の燃焼による直接排出)、スコープ2(社内で使用する電力を発電する際の間接排出)、スコープ3(サプライチェーン全体での上流および下流における排出)に分けて、算定し、本ウェブサイト内で公表しています。