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構造改革で得た強い企業体質を基盤に
安定した収益をあげながら
循環型社会の実現を主導していきます。

代表取締役 社長執行役員
石原 美幸

2022年度を振り返って

2022年度は、ユーザーの環境意識の高まりから、さまざまな分野でアルミニウム採用が多くみられました。とりわけ、当社グループの主力商材である缶材は、世界各地で旺盛な需要が続き、北米、タイの拠点の販売数量が増加しました。また、エアコン需要が世界的に拡大し、タイの拠点や日本国内からの販売量が増加しました。これらの旺盛な需要は現在も続いています。一方、半導体不足や自動車市場のサプライチェーンの混乱により自動車関連の板・押出材と自動車部品、箔の販売数量は減少したものの、海外市場向け缶材の販売数量が増加し、全体としては3万7,000トンの増加となりました。これらの結果、連結売上高は962,885百万円(前期比23.0%増)となり、増収となりました。

損益面では、残念ながら減益となりました。グローバルな缶材需要によってタイ、北米の拠点の業績が好調であったものの、エネルギーと添加金属の価格高騰による大きな影響を受けた結果です。加えて、受注生産をしている自動車材・自動車部品は、自動車分野の生産混乱からお客様からの内示の量と実際の取引に差が生じ、利益に影響を及ぼしました。これらの結果、連結営業利益は17,207百万円(同71.1%減)、連結経常利益は8,732百万円(同83.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は4,703百万円(同85.3%減)となりました。

構造改革を完遂し「稼ぐ力」が向上

当社は、2019年10月から「稼ぐ力の向上」「財務体質の改善」「マネジメントの仕組みの強化」を柱とする構造改革を推進してきました。その前年の2018年、経営統合後の大型投資が最終局面を迎えると同時に、米中貿易摩擦ならびに中国経済の減速によりアルミニウムの需要が減少した時期であったことが、改革に着手するきっかけでした。

3つの柱のうちの「稼ぐ力の向上」については、海外拠点の大型投資の収益化や国内の生産拠点の集約などを進めてきました。その結果、計画の最終年度である2022年度に構造改革開始時よりも損益分岐点を10%下げ、210億円創出するという目標を達成でき、「稼ぐ力の向上」を示すことができました。

構造改革結果まとめ

改革を進めるなかで、コロナ禍の影響で一時は目標に未達とする時期もありましたが、強い決意をもって追加施策を迅速に実行したことが目標達成を大きく後押ししました。マネジメントの仕組みを強化した結果、2022年度下期からは、変革のスピードアップと実行力が実績に大きく顕現してきました。値決め構造の是正効果は、外部環境の変動に対するタイムリーな施策実行の成果の実例です。このように、外部環境に迅速に対応できる実行力が備わったこと、自らそのように変革できたことに大きな手応えを感じています。

今後は、サステナビリティへの取り組みを強化し、中長期的な先を見据えて、より外部環境の変化に迅速に対応し、安定した収益をあげられるようにさらに改革を推進していきます。

経営環境の変化と構造改革の施策

2023年度の見通し

当社の長期経営ビジョン「VISION 2030」では、リサイクル性の高いアルミニウムをさらに幅広い分野で活躍できる素材として展開することで、社会課題の解決とサステナブルな社会の実現への貢献を目指しています。アルミニウムによるサーキュラーエコノミー(循環経済)を構築する〝心臓〟として循環型社会の構築を主導していくことが、当社が長期的に目指すべき姿です。

その「VISION 2030」の実現に向け、中期経営計画の最終年度のとなる2023年度は、構造改革の完遂から生まれた企業体質をベースに基盤を固める「総仕上げの年」と位置づけています。
まず、売上への貢献としましては、リサイクル性の高いアルミニウムの環境側面への期待が継続し、さらに需要が増加する見込みです。生産計画が混乱していた自動車生産も半導体供給の落ち着きから安定し、自動車材および自動車部の需要回復が見込まれます。半導体不足は解消基調で、半導体製造装置向け厚板も中長期的には需要は堅調と見ています。

エネルギー、添加金属の価格高騰の影響は続きますが、販売価格への転嫁による効果が顕現し、利益を大きく押し上げると予想しています。しかしながら、エネルギーコストが一段と高まる想定にあるため、安定した収益確保のための施策を引き続き検討していきます。

棚卸資産影響前経常利益分析

以上により、連結業績予想※1につきましては、連結売上収益970,000百万円、連結営業利益34,000百万円、親会社所有者に帰属する当期利益15,000百万円を見込んでいます。また、構造改革により収益基盤が強化され収益力が安定してきたことから、株主還元として2023年度より中間と期末の2回の配当を予定しています。

一方、2023年4月には、お客様のGHG排出量を証明する商品として、グリーン電力に由来する原料を用いたアルミ板材「UACJ SMARTマスバランス」の提供を開始しました※2。あわせて、UACJグループの主要国内製造拠点のうち6割以上におよぶ加工品事業の17拠点を100%再エネ電力使用の工場とすることで、お客様がさらに当社アルミニウム製品を選んでいただきやすくします※3

今後も、こうしたアルミニウムの素材の力を引き出す当社ならではの強みを活かしながら、アルミニウムの使用用途拡大に注力すると同時に、アルミニウムのサーキュラーエコノミー(循環経済)の構築を通じて、企業価値向上に取り組んでいきます。