サステナビリティマネジメント
サステナビリティの考え方
当社にとってのサステナビリティとは、企業理念そのものです。サステナビリティ活動を企業経営の存在意義が問われる中核要素として捉え、その活動の主体となる従業員が当社グループを取り巻く社会のさまざまなステークホルダーと協働し、「100年後の軽やかな世界」を目指していくことを基本とし、グループ一体となって推進していく必要があると考えます。
この考えを「サステナビリティ基本方針」として定め、環境問題をはじめ、現代社会が抱えるさまざまな課題を将来に残さず、子どもたちの世代が、今より軽やかで楽しい未来を過ごすことができるよう、サステナビリティ活動を推進しています。
そのために、当社が社会とともに持続的に成長していくうえで優先的に取り組むべき課題を「マテリアリティ」として特定しています。
持続可能な社会づくりに貢献できる企業でなければ、将来にわたって事業を継続できない―この危機感、使命感のもと、当社は社会に対してより良いインパクトのある実効性の高い活動を推進しています。
サステナビリティ推進体制
当社は、サステナビリティ活動の責任を明確化するとともに意思決定の迅速化を図り、各種の取り組みを着実に推進するため、サステナビリティ推進体制を構築しています。
具体的には、マテリアリティごとに責任者および管掌部署を定め、それぞれがあらかじめ設定されたKPIに基づいて進捗状況を把握しています。さらに、これらの進捗状況について定期的に開催する分野ごとの報告会議体で報告および討議を行うことで、取り組みの実効性を高めています。
2023年4月には「サステナビリティ推進本部」を新たに設置しました。この推進本部が中心となり、社会課題解決を起点とする顧客への価値提供と新たなビジネスモデルの創出を図っていきます。
マテリアリティ推進体制(組織と会議体)
マテリアリティ項目 | 責任者 | 担当部署 | KPIモニタリング | |
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会議体名 | 頻度 | |||
「アルミ二ウムの循環型社会」の牽引 | 気候変動対策推進担当役員 | 気候変動対策推進部 安全環境部 |
環境委員会 | 年3回(6月・10月・2月) |
気候変動への対応 | ||||
自然の保全と再生・創出 | ||||
人権の尊重 | ビジネスサポート本部長 | コーポレート法務部 | コンプライアンス委員会 | 年1回(3月) |
多様性と機会均等の浸透(DE&I) | サステナビリティ推進本部長 ビジネスサポート本部長 |
ダイバーシティ推進部 人事部 |
人材委員会 | 年2回(7月・11月) |
ASI認証の取得
当社は、サステナビリティ基本方針と考えを一にする、さまざまな外部イニシアチブに参加しています。国連グローバル・コンパクトへの署名やCDP※1、EcoVadis※2での評価獲得などがその具体例であり、こうした活動を通じて、事業や供給素材の持続可能性の向上に取り組み、高い透明性と客観性を持ってこれらを社会に示す努力を継続しています。
2022年に取得したASI※3認証もその活動の一つの成果です。ASIは、アルミニウムのサプライチェーン全体におけるサステナビリティへの取り組み向上、ESG観点からの社会貢献を最大化することを目的とした国際イニシアチブです。ASIには国際アルミニウム協会(IAI)、アルミニウム生産者、加工メーカー、エンドユーザーなどさまざまな立場でアルミニウムに関わる企業・組織が参画しており、2024年7月現在では360以上の企業・組織が加盟するに至っています。ASIではアルミニウム業界におけるサステナビリティに対するパフォーマンス、生産・加工・流通過程のトレーサビリティに関するグローバルな基準づくりのほか、その審査や承認を行っています。
当社は、グローバルな顧客やアルミセクターの動向を注視し、2020年7月に日本のアルミニウム圧延メーカーとして初めて、ASIに加盟しました。さらに2022年にはグローバルに製品供給を行う福井製造所、UATH※4のラヨン製造所の二拠点にてASIの二つの認証(パフォーマンス スタンダード:PS※5、チェーン オブカストディー:CoC※6)を取得しました。ASI認証を取得するには、製造・管理部門における監査の対応や、幅広い観点で求められる情報開示の負担増大、調達コスト増大など大きなコストがかかります。しかしながら当社はアルミニウムのグローバルメジャーとして、業界のサステナビリティにおける基準づくりに参画する重要性を認識し、加盟と認証取得をいち早く決定しました。
近い将来には、ASI認証の取得は本業界におけるビジネスの必須要件となることが予想されます。当社は、本認証取得を通じ、ESGのすべての面で信頼に値する企業として、世界中の顧客に、サプライチェーンが管理された信頼できる素材を提供することが可能となっています。実際に、2024年に入り、欧州の大手飲料缶メーカーなどが取引の基本的な条件としてASI認証取得を指定するケースが増えています。ASI認証を重要視する傾向は、今後、北米やアジアなど他の地域への拡大、自動車や家電用の素材など他の用途への拡大が予想されます。当社は、グローバルに多品種を供給することを強みとしており、ASI認証取得は、この競争力にさらにサステナビリティの面で差別化の要素を加えるものと考えています。また、このような製品供給面だけでなく、ASI認証の取得活動を通じて、当社のサステナビリティの水準を向上させ、企業価値の向上にもつなげていきます。
- ※1 企業の環境問題への取り組みを、スコアを用いて評価する国際的な非営利団体
- ※2 企業とそのサプライチェーンを対象に、4つのサステナビリティテーマで評価する国際的な機関
- ※3 Aluminium Stewardship Initiative
- ※4 UACJ (Thailand) Co., Ltd.
- ※5 企業統治・環境・社会的責任について持続可能性や透明性を高めるための基準
- ※6 加工・流通過程までの持続的な開発のための基準
UACJにとってのASI加盟の意義

グリーンファイナンスの活用
グリーンファイナンスとは、企業や自治体が気候変動対策・廃棄物削減や生物多様性保全などの環境問題に取り組む事業への資金を金融面からサポートする投融資を指します。
UACJは、「素材の力を引き出す技術で、持続可能で豊かな社会の実現に貢献する。」を企業理念として掲げ、アルミニウムを通じて、地球規模での環境負荷の低減に貢献していきたいと考えています。長期経営ビジョン「UACJ VISION 2030」においても、「アルミニウムを究めて、サステナブルな社会の実現に貢献する」ことを目指す姿として、サステナビリティ活動を企業経営の存在意義が問われる中核要素として位置付けています。
特に、当社は「循環型社会の構築」を企業価値向上の点でも重視しています。アルミニウムは、新地金を使用する場合に、GHG排出や汚染物質の排出などで、環境への負荷が大きいことから、アルミニウムの循環(水平リサイクル)を促進することで、気候変動への対応と自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)にも寄与します。すなわち、アルミニウムの循環による創出価値が大きいことから、第4次中期経営計画でも「リサイクル推進」を最も重要な成長・付加価値戦略に位置付けています。
こうしたビジョン・戦略のもと、企業価値向上に向けた施策のより一層の推進に向けて、グリーンファイナンスによる資金調達を実施しました。グリーンファイナンス・フレームワークの詳細は、株式会社日本格付研究所による「株式会社UACJグリーンファイナンス・フレームワーク」評価レポートをご覧ください。
外部評価
グリーンファイナンス概要
第1回グリーンローン
実行日 | 2025年1月31日 |
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借入方式 | シンジケートローン |
アレンジャー兼エージェント | 三井住友信託銀行 |
契約金額 | 40億円 |
資金使途(グリーンプロジェクト) | 使用済飲料用アルミ缶(UBC)を分離・溶解一貫処理する設備及びそれらを設置するために必要な建屋 |
貸付人は、本件をわが国の気候変動対応に資する投融資と判断し、日本銀行の「気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション」(通称:グリーンオペ)による資金供給を受ける予定です。
主なステークホルダーへの責任とコミュニケーション方法
主な責任 | コミュニケーション方法 | |
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お客様 | 製品およびサービスの品質維持・向上 社会に有用な製品・サービスの提供 幅広い技術と知見によるお客様の課題解決 |
日常取引における対話 ウェブサイト 技術展 顧客満足度調査 |
調達取引先 | 法令を遵守した公正な取引を通じた健全な関係の構築 サプライチェーン全体でのCSRの実現 |
日常取引における対話 |
地球環境 | 温室効果ガス排出量の削減 省エネ、リサイクルの推進 生物多様性保全 産業廃棄物の削減 有害化学物質の管理と削減 |
各種法規制への対応 地球温暖化防止に関する京都議定書、生物多様性に関する名古屋議定書などへの対応 環境省などの推進する環境運動への対応 |
株主・投資家 | 適正な利益の還元 適時・適切な情報開示 企業価値の向上 |
株主総会 株主通信 決算説明会 テレフォン・カンファレンス ワン・オン・ワン・ミーティング 株主工場見学会 ウェブサイト |
従業員 | 人権の尊重 人材の育成と公正な評価・処遇 労働安全衛生とメンタルヘルスを含む健康への対応 多様な働き方、仕事と生活の両立の支援 |
社内報 イントラネット |
地域社会 | スポーツ・文化振興、次世代育成 伝統行事への協力、共催 地域NPO法人の業務支援およびNPO法人との協働 |
工場見学会 地域共催行事 地域清掃活動など従業員による社会貢献活動 |
外部評価
CDP2024「気候変動」「水セキュリティ」で「A-」の評価を獲得
UACJは、2025年2月、環境情報開示イニシアチブであるCDPによる調査「CDP2024」において、「気候変動」「水セキュリティ」の両部門で「A-」の評価を受けました。
環境に関するマテリアリティである「アルミニウムの循環型社会」(サーキュラーエコノミー)の牽引、「気候変動への対応」、「自然の保全と再生・創出(ネイチャーポジティブ)」への取り組みの充実に務めたことが評価につながっているものと考えています。
今回受けました「A-」評価は、リーダーシップレベルに該当します。
CDPについて
CDPは、2000年に英国で設立された非政府組織(NGO)で、投資家、企業、自治体などが自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。現在、環境アクションに関する世界最大かつ最も包括的なデータセットを有しており、CDPが持つ知見は、投資家、企業、自治体などが環境データに基づく意思決定を行うために活用されています。2024年度は全世界で24,800社以上の企業が回答し、日本企業ではプライム市場上場企業の70%以上を含む2,100社以上が回答しています。
「SOMPOサステナビリティ·インデックス」の構成銘柄に三年連続選定
UACJは、SOMPOアセットマネジメント株式会社が運用する「SOMPOサステナビリティ·インデックス」における2024年の構成銘柄に選定されました。「SOMPOサステナビリティ·インデックス」は、2012年から設定されており、ESGの取り組みに優れる約300社が毎年選定され、同社の「SOMPOサステナブル運用」に活用されています。「サステナブル運用」は、ESGにフォーカスした運用プロダクトです。本インデックスは毎年見直しが行われており、UACJのESGに関する取り組みが評価され、2022年から三年連続で選定されています。
MSCI ESG格付けで「AA」を二年連続で獲得
UACJは、米国のMSCI社が実施する2024年MSCI ESG格付けにおいて、2023年から二年連続で「AA」を取得しました。また、「Japan ESG Select Leaders」の構成銘柄としても組み入れられています。
外部イニシアチブへの参加
水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)に参画
UACJは、水素分野におけるグローバルな連携や水素サプライチェーンの形成を推進する団体「水素バリューチェーン推進協議会、以下「JH2A」)」に2021年3月4日より参画しました。
当社の製造するアルミニウム材は、水素バリューチェーンの中の物流や貯蔵に使用が見込まれます。このたび、早期に水素社会を構築させることを目的としたJH2Aの趣旨に賛同し、参画を決定しました。当社は、他の会員企業と連携し、高品質なアルミニウムの提供を通じて、水素社会の実現に貢献していきます。
国連グローバル・コンパクトに署名
UACJは、2021年4月、国際社会において持続可能な成長を実現するための国際的なイニシアチブである「国連グローバル・コンパクト」(以下、UNGC)へ署名しました。
UNGCは、1999年の世界経済フォーラム(ダボス会議)にてコフィー・アナン国連事務総長(当時)が提唱し、2000年7月に国連本部で正式に発足してから現在に至るまでに、世界160カ国、12,000以上の企業・団体が署名しています。UNGCに署名する企業・団体は、「人権の保護」、「不当な労働の排除」、「環境への取り組み」、「腐敗防止」に関わる10の原則への賛同とその実現に向けた取り組みが求められます。
当社は、グローバルに事業を展開するアルミニウム総合メーカーとして、社会のサステナビリティ向上に貢献していきます。
「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同表明
UACJは、2021年9月、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画しました。当社は、TCFDの提言に基づき、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標の4つの視点から、気候変動が事業に与えるリスク・機会について、積極的な情報開示を進めていきます。
「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加
30by30はG7各国の約束で、2030年までに生物多様性の損失を食い止め回復させるというゴールに向け、陸域および海域の30%以上を健全な生態系として効果的に保全することを目標としています。UACJはこの趣旨に賛同し、環境省により創設された「生物多様性のための30by30アライアンス」に参加しています。
「GXリーグ」に参画
UACJは、2024年度より「GXリーグ」に参画しました。 2024年3月27日に、2024年度のGXリーグ参画者一覧が経済産業省より公表され、本年度より新たに179者の新規参画者を加え全体で747者となります。
経済産業省HP「GXリーグに2024年度から新たに179者が参画し、合計747者となります」 GXリーグ公式サイト
UACJも2024年度より新たに参画を表明し、日本社会のGX(グリーントランスフォーメーション)促進に貢献していきます。
「サーキュラーパートナーズ(Circular Partners)」に参画
UACJは、経済産業省が主導するサーキュラーエコノミーに関する産官学連携パートナーシップ「サーキュラーパートナーズ(Circular Partners)」に参画しました。サーキュラーパートナーズへの参画を通じて、他会員との連携を強化し、循環経済(サーキュラーエコノミー)実現に向けて取り組んで参ります。