社外取締役対談

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“軽やかな世界”の実現という明確なビジョンのもと
強い決意と覚悟を持ってマテリアリティの実践を

社外取締役(独立役員)
永田 亮子 日本たばこ産業(株)にて執行役員、監査役としてグループ会社を含む経営に携わり、豊富な経験と経営に関する広範な視野を持つ。また、営業・マーケティングやサステナビリティについても造詣が深い。

社外取締役(独立役員)
赤羽 真紀子 さまざまな業種の多国籍企業のCSR担当として関連部署の立ち上げや活動を推進。現在は、CSRアジア(株)代表取締役として、豊富な知見と経験に基づきサステナビリティに関するコンサルティングに取り組む。

UACJグループは、内外の環境変化を踏まえ、2021年に発表したマテリアリティを再整理し、5項目からなるマテリアリティを特定しました。新たなマテリアリティへの評価や展望、期待などを、社外取締役のお二人に語り合っていただきました。

UACJならではの独自性あるマテリアリティへと進化

赤羽
2023年12月のESG説明会において、新たなマテリアリティが発表されました。永田さんは、今回のマテリアリティの見直しをどのように評価されていますか。
永田
以前のマテリアリティは、社会が直面する幅広い課題を網羅していたものの、厳しい言い方をすれば業種業界に関係なくどの企業にも共通する内容でもありました。それに対し、新マテリアリティは、当社の一丁目一番地の課題として「アルミニウムの循環型社会」の牽引(サーキュラーエコノミー)を明示したことによって、社会に対する非常に力強いメッセージになりました。これはUACJだからできること、やるべきことであり、その点を強くアピールしていくべきだと思います。
赤羽
私も「アルミニウムの循環型社会」の牽引にフォーカスしたことを高く評価しています。草案の検討段階においても「社名を変えたらどの会社にも当てはまる内容ではないか?」「UACJらしさが足りない」といった意見が出たのですが、それを受けて再検討した結果、UACJならではの独自性あるマテリアリティになったと考えています。
永田
2024年度からスタートした第4次中期経営計画では、『素材提供企業から「素材+α」の付加価値提供企業へ』をコンセプトとし、その「+α」の一つに「リサイクル推進」を位置づけています。これは、「+α」の環境価値を持つ素材としてアルミニウムの需要・用途を拡大し、「アルミニウムの循環型社会」を構築することによって、サステナビリティを推進すると同時にグループ全体の企業価値向上を目指すものです。新たに特定したマテリアリティと第4次中期経営計画は、成長戦略とサステナビリティのベクトルを一致させて財務と非財務の統合を図ったという点でも高く評価しており、着実な実行を期待しています。

リサイクル推進による+αの価値創出を競争力の源泉に

赤羽
国際アルミニウム協会(IAI)の統計によると、世界のアルミニウム需要は、2030年までに、2020年比約40%も増加すると予測されています。アルミニウムメーカーにとって、この旺盛な需要にどのように対応していくかが大きな課題となっています。
永田
今後、資源争奪戦が激化し、原料確保が難しくなる恐れもあります。さらに気候変動に配慮して、製造時のエネルギー消費を抑えながら、増大するアルミニウム需要に対応していかなければなりません。
赤羽
そうした相反する課題に対応していくためにもリサイクル推進は重要です。リサイクルを繰り返すことで資源を有効活用できるのはもちろん、新地金に比べて製造時のGHG排出量を大幅に低減できるからです※1。また、世界のマーケットでは、その製品・素材がどのようなエネルギーで作られているかが問われる時代になっています。それだけに、リサイクル推進と同時に、製造工程におけるグリーンエネルギーの活用を促進していくことも重要です。
永田
おっしゃる通り、リサイクル推進による資源循環の仕組みを事業に組み入れるとともに、グリーンエネルギーの活用などによって環境負荷を低減したアルミニウム製品を積極的に提供していくことが、UACJグループの競争力強化につながると思います。
  • ※1 アルミニウムのリサイクル材製造時に必要なエネルギーは、同じ量の新地金を製造する場合の3%程度にとどまり、アルミニウム製品の原材料を新地金からリサイクル材に置き換えることで、製造時に排出するGHG排出量の97%を削減できます。

コミットメントの実現に向けてワンチームで後押ししていく

永田
新たな5つのマテリアリティに対して、具体的な評価指標と、2030年度、2050年度の達成目標を設定しました。例えば「アルミニウムの循環型社会」の牽引に関しては、UACJリサイクル率※2を評価指標に定め、2019年度実績65%に対して2030年度に80%、2050年度は100%を目指すという、非常にチャレンジングな目標を設定しています。これは“軽やかな世界”の実現に貢献するという明確なビジョンに基づく強い決意と覚悟の現れであると捉えています。
赤羽
その実現に向けて、当社では缶材以外でもアルミニウム製品のリサイクルループを構築するために幅広いステークホルダーへの働きかけを行っています。こうした5つのマテリアリティの進捗状況を、それぞれ取締役会がしっかりとモニタリングしていかなければなりません。
永田
モニタリングにおいては、単に「できているか/できていないか」を把握するだけでなく、課題分析や対策の検討など、次のアクションにつながる建設的な議論を行うことが大切です。また、適宜、他社の動向やグローバルトレンドをインプットするなど、広い視野に立って取り組みを支援していきたいですね。
赤羽
今回の5つのマテリアリティには含まれていませんが、私は、グループの「人材育成」についても注視していきたいと考えています。
永田
見直しの過程ではマテリアリティに残すべきとの意見もありましたが、最終的には、人材は経営基盤そのものであり、マテリアリティ=重要課題ではなく「当たり前のこと」として取り組んでいくことになりましたね。
赤羽
中期経営計画もマテリアリティも、実践するのはグループ社員一人ひとりです。すべてのグループ社員が能力をいかんなく発揮できるよう、人材育成の強化に継続的に取り組まなければなりません。また、優秀な人材にここで働きたいと思ってもらえるように、働きやすい職場環境に整備するなど、UACJをもっともっと魅力的な会社にしていく必要があります。
永田
そうした経営基盤の強化も含め、当社が中期経営計画の成長戦略やマテリアリティを一つひとつ着実に実践していくことに強いコミットメントが必要です。私たち取締役会もワンチームとなって目標達成を後押ししていきます。
  • ※2 溶解炉への装入量に対する循環アルミニウム量の割合として算出する、アルミニウムの資源循環性を示す当社指標