サステナビリティ推進本部長メッセージ
アルミニウムへの期待を
追い風として一段上の
サステナビリティ活動を推進。


取締役 常務執行役員
サステナビリティ推進本部長
田中 信二
構造改革を経て、サステナビリティ推進部門を稼ぐ部門に
UACJは2019年10月から3年半にわたって構造改革に取り組み、国内収益の改善や海外大型投資の収益化など収益面で成果を上げると同時に、会議体や組織体制の見直し、グループ理念体系の再定義など、マネジメント体制・仕組みの強化を推進してきました。構造改革は収益性や組織体制などを立て直すフェーズと捉えていましたが、これらの活動は、新たなビジネスの創出と社会課題解決の両立を目指す恒常的な活動、すなわちサステナビリティ活動へと姿を変え、現在は一段ステージを上げた取り組みを開始しています。そして、こうした活動の中心となる部門として、2023年4月に「サステナビリティ推進本部」を設置しました。当社では、従来からサステナビリティ活動の推進組織としてサステナビリティ推進部を設置していましたが、今回の組織改編では、構造改革の成果である「稼ぐ力の向上」をサステナビリティとより強く結び付けて、守りの組織から攻めの組織へと進化していくことを目的・狙いとしています。
近年、地球環境の悪化が一層深刻化するなか、経済の観点からはサステナブルな開発が、技術の観点からは環境対応技術への対応が求められるなど、当社グループを取り巻く環境は大きく変化しています。こうした変化を背景に顧客ニーズの多様化が進み、とりわけ環境負荷低減製品に関するご期待・要請はますます大きくなっていると実感しています。これらのニーズに応えるためには、顧客と日々対話を重ねている事業部門と、気候変動対策やリサイクルに関する知見を持つサステナビリティ推進本部が相互に連携することで、顧客への提供価値やビジネスモデル創出に繋げ、それこそがサステナビリティ推進本部の存在意義だと理解しています。現在進めている取り組みの一例として、サステナビリティ推進本部内の気候変動対策推進部が管轄する気候変動対策推進委員会において、顧客ニーズや各国の動きなどを共有しながら、どのような施策・対応を行うかを議論しています。また、最近では板、押出、箔、鋳鍛、自動車部品、加工品の各事業が相互に情報共有する連絡会も設置され、グループ内で情報が回遊する仕組みも整いつつあります。
事業部門とサステナビリティ推進本部の協働は始まったばかりですが、多様な取り組みを通じて、利益を生み出すと同時に地球環境保全に貢献するという成果を生み出していけると思います。サステナビリティ推進本部が先頭に立って「利益創出と社会課題解決の両軸で責任を果たす組織」に成長させていきたいと考えています。
アルミニウム=エコな素材として認知度を高め、選ばれる素材へ
深刻化する海洋汚染の広がりや気候変動を背景に、脱プラスティックやEVシフトなどが加速し、アルミニウムの需要は急激に拡大しつつあります。実際に、製品製造時のCO2排出量の照会やCO2発生量が少ない製品についてのお問い合わせ件数は年々増加しており、環境性能が顧客の素材選択基準として強く意識されてきていると感じています。
アルミニウムは、リサイクル材を使えば使うほど、再生可能エネルギー電力活用によるグリーンアルミニウム地金を使えば使うほど、CO2排出量が減っていきます。当社が排出するCO2は多くがスコープ3であり、その中の多くを地金製造(製錬)時の電力由来の排出が占めています。したがって、当社が新地金をグリーンアルミニウム地金やリサイクルアルミニウムへ置き換えることは大幅なCO2排出量の削減となり、その結果として顧客のスコープ3における排出量の削減にもつながります。こうした考えから、顧客への提供価値向上と環境負荷の低減に向けて取り組んでいるのが、「アルミニウムを通じたサーキュラーエコノミーの形成」です。
これは、リサイクルしやすい材料の開発、使用済みアルミニウム製品の回収といった「動脈」と「静脈」をつなぐサプライチェーンの構築、グリーンアルミニウム地金の利用やリサイクル材への置き換えによって、持続可能な社会を実現し、アルミニウムを通して環境価値を提供するというものです。このサーキュラーエコノミーは、当然ながら当社グループのみで形成できるものではないため、お客様や回収業者、同業他社などと連携して、国内のアルミニウムの使用と循環を促していく取り組みが動き始めています。このサーキュラーエコノミーがもたらすアルミニウムの環境価値を積極的に発信することで、選ばれる素材としての認知度を一層高めていきたいと考えています。
今後はアルミニウム循環の大きな環の形成に向けて、地球環境保護という重要なゴールを目指すパートナーを有機的につなぎ、推進力を与える「心臓」としての役割を果たすことが我々の責務だと認識し、推進していきます。
社会課題解決と利益創出の両立に向けた活動を推新
当社グループのサステナビリティ活動を推進していくうえで、最大の仲間は従業員です。グループの従業員に対しては、アルミニウムの素材特性や環境価値とともに、当社グループが果たすべき責任や当社らしいサステナビリティ活動とはどのようなものかを十分に共有し、共感を得ることが重要だと考えています。従業員が、顧客やサプライヤーに向けて当社グループのサステナビリティを拡げていくことに期待しています。実際、この1 ~ 2年の間に、従業員のサステナビリティ活動に対する熱量が上がっていると感じています。例えば、最近の「気候変動対策推進委員会」においても非常に闊達な議論がなされていて、なかなか時間通りに終わらず、スタートした当初とはまったく雰囲気が違っています。こうした変化は、サステナビリティを推進する立場からすると非常にうれしく、従業員一人ひとりがサステナビリティ活動を利益創出の取り組みと位置づけて、身近なところから行動を起こしていってほしいと思います。
また、地球環境保全の観点では、先ほどのサーキュラーエコノミーの構築のほかに、「気候変動」、「水」、「生物多様性」への取り組みを開始しています。マテリアリティの一つでもある「気候変動」については、TCFD提言に基づくリスク評価やシナリオ分析を実施するなど、実効性の高い取り組みを推進し、2022年12月には環境情報開示イニシアチブであるCDPによる調査において、「気候変動」「水セキュリティ」の両部門で「B」の評価を受けました。「生物多様性」については、ネイチャーポジティブに関する社内勉強会を開始するなど、当社が生物多様性、自然資本の保全にどのような形で貢献できるのか、追求していきたいと考えています。
サステナビリティ推進の責任者である私の使命は、当社グループが社会において果たすべき責任を明確にし、利益創出と社会課題解決を両立させるために必要なことは何かを社内外に発信することにあります。現中期経営計画において「サステナビリティを経営の中核に据える」ことを掲げてから3年が経過し、グループ内にサステナビリティの本質と必要性が広く、グループ内に深く浸透してきています。現在、2024年に公表する次期中期経営計画の策定と並行して、マテリアリティの見直しに向けた検討を行っており、サステナビリティへの意識・要請の高まりを踏まえ、幅広な検討・議論を重ねているところです。アルミニウムを取り巻く環境が追い風にある今、当社グループのサステナビリティ活動のレベルを一段上げて、従業員、お客様、調達先など、アルミニウムのサプライチェーンに関わる多くの皆さまとともに、「100年後の軽やかな社会」の実現を目指していきたいと考えています。